墨場必携:訳詩 近現代詩

蝶 ハインリッヒ・ハイネ
訳 片山敏彦
蝶、花うばらを恋ひ
その花をめぐりて飛びやまず。
されどまた蝶をめぐりて
金色に柔らかき日の光の恋ごころ漂ふ。
さて薔薇は誰を恋ひせる。
それをこそわれは知りたし。
歌うたふ鶯か、
うち黙(もだ)す夕べの明星(ほし)か。
誰を薔薇の慕へるか知り得ざれど
薔薇よ、蝶よ、日の光よ、
夕星(ゆふぼし)よ、たそがれに啼く鶯よ、
おんみらのすべてをわれは慕ふ。

【文例】 唱歌・童謡へ
本が大好きな猫、みやといっしょに、すてきなことばを探します。
2009年5月18日