墨場必携:唱歌・童謡 ひなまつり
江戸ひな人形 東京都清瀬市郷土博物館蔵
雛祭[ひな]の宵 作者不明
ぼんぼりに灯を 入るるとて
電灯殊更 消すもよし
瓔珞[やうらく]ゆれて きらめきて
物語めく 雛祭[ひな]の宵
十二一重の 姫君の
冠少しく 曲がれるを
直すとのべし 手の触れて
桃の花散る 雛祭の宵
官女三人[みたり]の まねすとて
妹まじめの 振舞[ふるまひ]に
加はりたまふ 母上の
えまひ(笑まひ)うれしき 雛祭の宵
ひなまつり 海野厚
ひももの花にお白酒
あられ草餅緋毛氈
おひなさまのお祭りに
皆様おまねきいたしませう
五人囃子のおはやしに
官女の舞の美しさ
前ぢやみんなで賑やかに
お琴をひいたり歌つたり
遊んでやがて日が暮れりや
お内裏様もおさみしい
早くおあかり點もしませう
おぼろおぼろの雛段に
楽しいたのしい夜が更けて
外はほんのりお月さま
薄桃色のぼんぼりに
ねむりやきれいな夢ばかり
雛祭 文部省唱歌
『新訂尋常小学唱歌 第五学年用』昭和8年(1933)
1 お行儀正しい内裏さま、
赤い袴の官女たち、
五人ばやしが次次と、
きれいに並ぶ壇の上、
雪洞[ぼんぼり]つけて、坐[すわ]つて見れば、
金の屏風がきらきらと、
夢のお国の御殿[ごてん]のやうに。
2 赤い毛氈美しく、
菱のお餅にお白酒、
お菓子・豆いり、いろいろと、
きれいに並ぶ壇の上
花瓶にさした緋桃の花も、
半[なか]ば開いて、にこにこと、
お伽噺[とぎばなし]のお家[うち]のやうに。
ひなまつり 林柳波
赤いもうせん しきつめて
おだいりさまは 上のだん
きんのびやうぶに ぎんのだい
五人ばやしや 官女たち
そろつてならぶ 下のだん
どれもきれいな おひなさま
あられひしもち おしろざけ
ぼんぼりかざる おもしろさ
けふ(今日)は三月 ひなまつり
ひなまつり 水谷まさる
赤い雛壇[ひなだん]金びやうぶ
咲いてにほふは桃の花
あれあれにつこりお雛さま
甘い白酒お豆いり
見るもきれいな雛料理
あれあれにつこりお雛さま
今日はたのしい雛祭
昔ながらのお祝ひ日
あれあれにつこりお雛さま
うれしいひな祭り サトウハチロー
あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花
五人ばやしの 笛太鼓
今日はたのしい ひな祭り
お内裏様[だいりさま]と おひな様
二人ならんで すまし顔
お嫁にいらした 姉様[ねえさま]に
よく似た官女[かんじょ]の 白い顔
金のびょうぶに うつる灯[ひ]を
かすかにゆする 春の風
すこし白酒[しろざけ] めされたか
あかいお顔の 右大臣
着物をきかえて 帯しめて
今日はわたしも はれ姿
春のやよいの このよき日
なによりうれしい ひな祭り
河津桜21.2.20 東京都清瀬市