墨場必携:散文 ぎやどべかどる ルイス・デ・グラナダ
・月朗らかに風涼しく、星の林のさやかなるを眺むれども、更にうき世の人の眺めに等しからず、御作者の艶[みやびや]かなるしるべとする也。閑[しづ]かに夜更けて人の音なひたえたる折節、草むらにすだく虫のかすかに物すごきを聞きても心をすまし、起きもせず寝[いね]もせずして、夜半を明かし、かんちこ(訳本には=「雅歌」)といふ経に見えたる如く、われ寝てしかも心は寝ずと云(ふ)に同じき也。
ルイス・デ・グラナダ『ぎやどべかどる』慶長4年(1599)
◎御作者 キリスト教における創造主、神を言う。
◎かんちこ キリスト教の教義に基づく雅歌。
20.10.16 東京都清瀬市
【文例】 近現代詩へ