墨場必携:散文 『源氏物語』乙女
[散文]
・北の東は涼しげなる泉ありて夏の蔭によれり。前近き前栽、呉竹、下風涼し
かるべく、木高き森のやうなる木ども木深くおもしろく、山里めきて、卯の花
の垣根ことさらにしわたして、昔おぼゆる花橘、撫子、薔薇[さうび]、くた
になどやうの花くさぐさを植えて、春秋の木草その中にうちまぜたり。
『源氏物語』乙女
・北の東は涼しげなる泉ありて夏の蔭によれり。前近き前栽、呉竹、下風涼し
かるべく、木高き森のやうなる木ども木深くおもしろく、山里めきて、卯の花
の垣根ことさらにしわたして、昔おぼゆる花橘、撫子、薔薇[さうび]、くた
になどやうの花くさぐさを植えて、春秋の木草その中にうちまぜたり。
『源氏物語』乙女
◎くたに:『大和本草』には竜胆(りんどう)とあるが、季節が合わない。
古注には牡丹の類とするものが多い。
◎光源氏の邸宅六条院の花散里の住まい。夏の趣向で造られた。
・家の造りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑きころ
わろき住居はたへがたきことなり。
古注には牡丹の類とするものが多い。
◎光源氏の邸宅六条院の花散里の住まい。夏の趣向で造られた。
・家の造りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑きころ
わろき住居はたへがたきことなり。