2022年11月12日から23年2月4日まで、√k Contemporary で、比田井南谷生誕110年「HIDAI NANKOKU」が開催されました。
ブログ酔中夢書2023はこちら。
そのとき、「比田井南谷のファンです」とおっしゃる、若い方々に出会いました。
南谷は弟子をとらなかったし、日本では注目されていないのに?
理由を聞いてみたら、びっくりするような答えが返ってきたのです。
これは、ムービーで残さなきゃ!
私は早速インタビューをお願いしました。
これをまとめたのが、YouTubeの動画「比田井南谷ー生誕110年」です。
(完成まで3ヶ月もかかってしまった)
構成
①最初の前衛書「電のヴァリエーション」が生まれるまで(1分31秒!)。
②その後、数年で変化を遂げ続けた作風の紹介。
③そして、メインとなる「南谷と作品を語る」(インタビュー)。
④1964年湯島聖堂での南谷揮毫映像によるエンディング。
インタビュー
大山エンリコイサムさん(美術家) オフィシャルサイトはこちら。
日本とニューヨークで活動していらっしゃるアーティストです。
「絵画とは違う、書独自の抽象化とは何か」
「いろんなレイヤーで書の抽象化を考えることにより、新たな可能性が見えてくる」
常識の枠を越えた鋭いことばの数々は、新しい表現の兆しを感じさせるものです。
佐藤達也さん(書家)
書壇からちょっと距離をおいた独自の活動をしていらっしゃいます。
幅広い知識と鋭い鑑識眼による、虚を突いたことば。
え? そう見るの? 一言一言が心に響きます。
最後に語ってくださったのは、
「今ではメディアや技術が進んでいるからいろんなことができるけれど、筆と墨と紙だけでこれだけの仕事ができるなら、そこにはもっと可能性がある。その可能性を見つけていきたい。」
書の将来は明るい!
高橋進さん(哲学者)
ムー教授として私のブログに度々登場します。(今年で結婚45周年)
同じ哲学科の学生だった頃、終電車で私の家になだれ込み、南谷と一緒に飲んで議論白熱した、酔っぱらい仲間の一人でもあります。
「南谷は単独者です。一人、独自の道を進む。」
「作り上げた世界に安住すると習慣になってしまう。惰性化していく。南谷はそれが一番いやだったんです。常に新しい方向を見つけていく。」
南谷オフィシャルページ管理人。英語版はこちら。
田村将理さん(インディペンデント・キュレーター)
南谷をリスペクトしています、とおっしゃる田村さん。
「奔放に作家性を表出するのではなく、南谷からは静かさと強い抑制を感じる。」
「海外にも線表現を追求する作家はたくさんいる。彼らにとって強いリファレンスになるのは前衛書。」
鋭い感性と豊富な知識を駆使して、簡潔かつ正確に分析してくださいました。
加島いちこさん(√k Contemporary ディレクター)
「南谷を美術的な視点でプレゼンテーションしていきたい」と語る加島いちこさん。
今回の展覧会も会期を延長し、ギャラリートークや臨書ワークショップなど、たくさんのイベントで盛り上げてくださいました。
√k Contemporaryでは、これからも、南谷や前衛書の企画が目白押しです。
戦後、さまざまの書の冒険が行われ、もう出し尽くされたとも言われています。
そんなことはない、というのが今回のインタビューの結論でした。
最後になりましたが、音楽と編集を担当してくださったのは伊東正美さん。
1995年に作ったビデオ「書ー二十世紀の巨匠たち」からお世話になっています。
書家が作品を書いているときとエンディングの、あの印象的なメロディーを覚えていらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
優れた音楽は映像を別次元に変えてしまう、といつも感じます。
また、写真の人物や煙が動いているのも伊東さんのシワザです。
音楽などの依頼は、謡象ウェブサイトからどうぞ。
もう一つ、最近の話題をご紹介します。
香港の「M+」は、アジア最大級の現代美術館として知られていますが、ここで開催中の展覧会に、南谷作品が展示されています。
You Tubeのエンディングに出てくる「作品64-8」です。
所蔵品の展覧会で、Individuals, Networks, Expressions というタイトルがつけられています。
展覧会のウェブサイトはこちら。
ここに表示されているムービーを見ると、ほかにも二点展示されている模様です。
下の方にスクロールすると、この作品の修復の様子も見ることができます。
大切にしてくださって、本当にありがとうございます。