春日井市道風記念館の「比田井南谷〜線の芸術」は、美術館のご協力をいただいて生涯の代表作を展示し、たくさんの方にご来館いただきました。

 

これに続いて、11月12日から12月10日まで、神楽坂にある現代美術画廊「√k(ルートk」で、比田井南谷生誕110年「HIDAI NANKOKU」が開催されています。

ここには、日本未発表作品や、南谷の拓本コレクションを含む約50点ほどの作品が展示され、また、関連イベントも計画されているので、ご紹介しましょう。

 

1Fの正面です。

メインに展示されているのは作品64-29(1964年の29番目に書かれた作品)、幅1m84cmの大きな作品です。

左右の壁面には、拓本の上に書いた作品や、「不思議な墨(二種類の古墨を磨りあわせた立体的な効果が出る墨)」を使った作品が展示されています。

(11月22日に展示替えが行われます。)

 

そして今回の目玉は、日本未発表の作品です。

 

左から作品6(1947年)、作品7(1949年)、作品15(1953年)。

これらは制作直後に発表されましたが、その後は展示されていません。

作品6には「鼎(てい・かなえ)と彝(い)」、作品7には(鳥と弓)という副題がついています。

最初の前衛書「電のヴァリエーション」(1945年)は、古籀彙編の「電」からヒントを得ましたが、上の二点も同じく古籀彙編の文字からヒントを得た作品です。

詳細はこちら

 

二階に展示されたこれらの作品は、1961年に制作され、欧米で発表されましたが、日本では展示されていません。

 

比田井南谷作品集で、岡部蒼風は次のように書いています。

「彼は、これらの作品において一つの実験を行なっている。

それは、減筆された細い線を用いて、しかも筆意がいかに空間を支配し、古典のある種の傑作に見られるような、強い造型性を創造することができるかどうかという試みである。」

南谷の書の中で、極めて異質の作品群です。

詳細はブログ酔中夢書をご参照ください。

 

こちらも2Fの展示です。

右の作品45(1956年)も日本では見ることができなかったもの。

左の作品42(1956年)は、第5回サンパウロ・ビエンナーレに出品された作品で、そのときに日本でも展示されましたが、その後は見ることができませんでした。

黒い布を使ったおしゃれな軸装です。

 

左で放映しているのは、今回のために作った動画です。

1963年に南谷が作品を書いている動画、1964年に湯島聖堂で行われた大きな作品の揮毫映像、第三次渡米のときに撮影された8ミリ映像が中心です。

最近は筆を振り回すような書き方が多いのですが、南谷は偶然性を一切排除し、張り詰めた緊張感の中でゆっくりと筆を運んでいます。

渡米中に撮影された映像の中には、ピエール・アレシンスキー、クルト・ゾンダーボルグ、ワラッセ・ティン、南谷の4名が合作するという、美術史上貴重な映像も含まれています。

ぜひご覧頂きたいと思います。

 

地下では、南谷が愛蔵した拓本を見ることができます。

 

正面には、北魏の鄭道昭が書いた「鄭羲下碑」。

 

石鼓文萊子侯刻石

 

龍門造像記の中から、「始平公造像記」や「牛橛造像記」など8点。

(天来書院発行の龍門二十品上はこちら、龍門二十品下はこちら。)

 

ほかに「開通褒斜道刻石」「郙閣頌」「泰山金剛経」「沈府君神道闕」などが展示されています。

 

 

最後に関連イベントのご紹介です。

 

ギャラリーツアー(解説:比田井和子)

11月23日 14:00〜と16:00〜

実際に会場をまわりながら南谷の作品についてお話しします。

予約は不要です。

 

ワークショップ「南谷流臨書体験」(講師:髙橋蒼石)

12月3日(土)15:00~17:00

展示されている拓本から好きな字を選び、臨書します。

参加費は1,000円。

筆をお持ちでない方は購入できます。(2,500円)

こちらは事前予約が必要です。

√K Contemporary  Tel: 03-6280-8808 / Email :info@root-k.jp

 

√kの住所は、 東京都新宿区南町6

都営地下鉄大江戸線「牛込神楽坂」A2出口 徒歩5分

東京メトロ東西線「神楽坂駅」神楽坂口 徒歩12分

東京メトロ「飯田橋駅」B3出口 徒歩10分

 

住宅街に溶け込むように佇んでいるので、そばまで行ってもなかなか気が付きません。

そんなときは、上記の電話番号にかけてみてくださいね。