9月9日から春日井市道風記念館で開催中の「比田井南谷−線の芸術」展。

9月27日から後期展示になり、約半数の作品が入れ替わりました。

前期と後期の展示作品リストはこちら

 

会場では「私の好きな比田井南谷作品ランキング」の投票が行われています。

展覧会の特設ページをの下の方までスクロールすると出てきます。

左は前期展示での得票数、右は後期展示が始まった最初の週のものです。

前期の第一位は「電のヴァリエーション」(千葉市美術館蔵)でしたが、展示替えによって「作品70-1」(佐久市立天来記念館蔵)に変わりました。

ふむふむ。なかなかおもしろい結果です。

前期・後期とも第二位につけているのが作品64-24。

「この作品が好き」という方が何人もいらっしゃいました。

 

また、これとは別に、アンケート用紙も設置され、結果が公開されています。

9月27日から10月2日まではこちら

9月21日から9月25日まではこちら(PDF)

9月9日から9月19日まではこちら(PDF)

 

一部をご紹介しましょう。

 

知らなかった作家。現代美術が好きで、チラシを見て行かねばと思った。すばらしい。ありがとうございます。

 

習字を習っています。形ばかりに気をとられていたが、線の大切さを感じました。

 

初めて知りました。書もアートだと初めて知りました。

 

臨書に努めます。

 

書に興味を最近持ちだしました。前衛書は今回はじめて見ました。書道展は何度か行ったことがありますが、今回の会場に入り、流れている空気がまったくちがうと思いました。 たいくつではない書を見ることができました。

 

心線の表現に驚きました。古典を学んだ上での表現であることで納得。強い説得力を感じます。

 

作品点数も多く、非常に見ごたえがあった。当時の墨象、南谷の作品に対する批評などの資料もとてもおもしろかった。

 

この展覧会で初めて比田井南谷という書家を知りました。展示もとても面白く、年代によっての作品の変化も感じることができました。書道に対するイメージが変わりました。

 

南谷の作品に出合って30年になります。多くの作品を鑑賞した後、電線のフォントを制作していた(精版)の仕事に改めて驚き感動しました。

 

書の表現方法を試行錯誤された軌跡が少しでも分かって、有難かったです。

 

現在紹介されているアンケート総数は、なんと119!

異例の多さだそうです。

まだ二週間あるので、どんなご意見が寄せられるか、これからも楽しみです。

 

そして、ぜひご覧いただきたいのは、展示内容を紹介する動画です。

南谷の紹介から展覧会の特徴、見どころなどがギュッとつまっています。

びっくりするぐらい充実した内容です!

 

全体的な解説をしてくださるのは学芸員の鈴川宏美さん。

長すぎず短すぎず、的確な紹介はさすがです!

バックに見えるのは「電のヴァリエーション」を布にプリントしたもの。

鈴川さんの発案です。

これだけでなく、展示室の隅々にまで行き届いた演出はすごい!

 

動画の中では会場の展示も紹介されています。

限りあるスペースですが、充実ぶりがわかりますね。

こんな展示は今後はできないかもしれません。(脅している)

見なくちゃ損、というもんです。

 

千葉市美術館からお借りした「電のヴァリエーション」について説明しました。

この作品、意外と小さいサイズなんです。

その左隣りが「作品9 電第二」(京都国立近代美術館蔵)。

両方とも、古籀彙編の「電」字がモチーフです。

「電のヴァリエーション」に関するブログはこちら

 

高橋蒼石先生は、南谷の臨書や文字の作品を解説してくださいました。

この屏風は南谷が25歳のとき、大日本書道院展に出品したもので、王羲之郷里人帖の臨書です。

父、比田井天来が気に入って、最晩年の病気療養中に、ベッドから見える場所に置かせたそうです。

南谷の将来を楽しみにしていたのかもしれません。

 

この動画は、学芸員鈴川さんの手作りです。

書のような特殊な分野ではそれが正解!

書を知らないプロダクションに頼むと、プロっぽい見た目にはなりますが、内容を充実させることは無理ですからね。

書のすばらしさを広く知らせるためにも、主催者の情熱がギュッとつまったこういう動画を、今後も作り続けてほしいと心から思います。

 

最後に図録です。

 

作品はすべてカラー印刷です。

単なる展覧会図録とあなどるなかれ!

南谷の代表作を網羅した、記念すべき作品集になっています。

 

もう一つ、図録の文章にもご注目ください。

総論を書いた高橋進氏は、何を隠そう(隠してないけど)酔中夢書でおなじみのムー教授、またの名を高橋無有、私のパートナーでございます。

長らく大学で哲学や美学を教えていましたが、定年になり、比田井南谷研究者になってしまいました(びっくり)。

心線の誕生から始まり、南谷の書の変遷や思想、海外活動などが簡潔にまとめられた、今までにない画期的な文章です。

それと、私が書いた「書の芸術性とは何か」、高橋蒼石先生の「比田井南谷の臨書」も収録されています(掲載順)。

まさに、比田井南谷の全体像を知ることができる決定版。

品切れになる前にお買い求めください。

 

 

「比田井南谷〜線の芸術」の準備が始まったのは去年の秋。

展示作品を決め、作品を借用する美術館に連絡し、展示作品がほぼ決まったのは今年6月でした。

それから開催初日まで、いろんなことがありました。(ありすぎた!)

主催者のみなさまの心がこもったすばらしい展覧会になりました。

心から御礼申し上げます。

(もうすぐ終わってしまうのがちょっとさびしい)