展覧会を見ようと思ったら美術館へ行きますが、美術作品を購入する場合に足を運ぶのはギャラリーです。

多くのギャラリーが集結し、作品を展示販売するのは「アートフェア」。

それらの中でもっとも規模の大きなものが、スイスの都市、バーゼルで開催される「アートバーゼル」です。

今年は6月13日から16日まで開催されていますが、世界各国から美術館担当者やコレクターが押し寄せるため、ホテル代は高騰し、予約も難しいほどです。

 

ここに出展するためには、アートバーゼル独自の厳格な審議を受け、さらに高額な出展料を支払わなくてはなりません。

こちらのブログが参考になると思います。

 

2024年は40カ国から285軒のギャラリーが出展しますが、日本からは3軒のみ。

 

その一つ、東京画廊+BTAPでは、会場を仕切って個展形式で展示する「キャビネット」部門に、比田井南谷を展示してくれています。

 

東京画廊は1950年に設立された日本最初の現代美術画廊です。

欧米の近現代美術を日本に紹介するのみならず、日本の戦後美術に寄り添い、育成に力を入れてきました。

今回の南谷も、その一環として展示しているのだと思います。

また南谷の対比として、篠原有司男、吉村益信など、ネオダダオルガナイザーズのアーティストの作品も展示されています。

 

会場風景です。

 

左手前は、桂ゆきの「おふだ」(1967年)。

50〜60年代にヨーロッパ、アメリカを巡る世界旅行に出掛けました。

南谷の初渡米も1959年でした。

 

その右は、もの派を牽引した李禹煥の「From Line 1981.11.22」(1981年)。

東京画廊+BTABは、韓国や中国の現代アートにも、いち早く注目し、紹介しています。

 

正面左の白い壁の前、電子レンジもれっきとした作品です。

吉村益信の「クッキング (Ed.1/5)」(1967〜76年)。

右の壁には、篠原有司男の「Hand Mirror」(1967年)。

篠原有司男も吉村益信も、60年代後半にアメリカに渡って活動したそうです。

 

そして、奥の方には不思議なモノクロームの世界が、と欧米の方は感じるに違いない。

比田井南谷です。

 

ほかの作品とまったく違う雰囲気になってますね。

 

左から「作品35」(1956年)。ファイバーボード・ラッカー・墨。

「作品64-22」(1964年)。鳥の子紙・墨。

「作品63-3」(1963年)。鳥の子紙・墨。

 

左は「無題」(1963〜64年)。鳥の子紙・墨。

その右は「作品6-鼎と彝」(1947年)。画宣紙・墨。

「電のヴァリエーション」の2年後、やはり「古籀彙編」からヒントを得た作品です。

(南谷と古籀彙編に関してはこちらをご覧ください。)

 

その右では、動画を放映しています。

南谷が作品を書いている動画を中心に、生涯と作品を紹介する動画です。

書作品がどのように制作されているか知らない欧米の美術関係者に、少しでも理解していただけると嬉しいのですが・・・。

 

 

東京画廊+BTAPのブースをもう少しご紹介しましょう。

 

左から、関根美夫の「No.234」(1971年)。

同じ作家の「作品 #105」(1966年)。

右端に、先ほど紹介した李禹煥の「From Line 1981.11.22」がはっきり見えますね。

 

左から李鎮雨の「無題」(2023〜24年)。

菅木志雄の「無題」(1983年)。

右は朴栖甫の「描法 No.081130」(2008年)。

 

現代美術と同じ場に書が並んでいると、表現方法は違いますが、同時代性を感じさせます。

かつてサンフランシスコの新聞が南谷を評して、「日本から来た新しい抽象様式」と書きましたが、現代芸術としての「書」の価値を一番認めていないのは日本ではないかと思ってしまうのは私だけでしょうか?

 

最後に、アートバーゼルのプレス画像に掲載されたブースの写真をご紹介します。

展示替をしました。

 

 

書道