2008年8月15日

墨場必携:散文 『源氏物語』乙女

[散文]

・北の東は涼しげなる泉ありて夏の蔭によれり。前近き前栽、呉竹、下風涼し
 かるべく、木高き森のやうなる木ども木深くおもしろく、山里めきて、卯の花
 の垣根ことさらにしわたして、昔おぼゆる花橘、撫子、薔薇[さうび]、くた
 になどやうの花くさぐさを植えて、春秋の木草その中にうちまぜたり。
                          『源氏物語』乙女

◎くたに:『大和本草』には竜胆(りんどう)とあるが、季節が合わない。
 古注には牡丹の類とするものが多い。
◎光源氏の邸宅六条院の花散里の住まい。夏の趣向で造られた。



・家の造りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑きころ
 わろき住居はたへがたきことなり。

同じカテゴリの記事一覧