10月17日に、長野県佐久市で「第15回天来祭り」が開催されました。
天来自然公園で石碑を見ながら行われるはずでしたが、あいにく雨の予報。
(上の写真は2016年のもの)
前日に急遽実行委員会が招集され、「最近の天気予報は当たるからなあ」ということで、片倉公民館が会場になりました。
「片倉公民館」の看板は金子卓義先生の書です。
佐久市長、栁田清二さんの来賓挨拶。
市長さんは書がお好きで、「比田井天来・小琴顕彰 佐久全国臨書展」授賞式に行われるパフォーマンスでは、いつも最初に臨書をご披露くださいます。
書のセンスはすばらしく、周りで拝見する私たちが驚くほど。
今年は授賞式のみで、新型コロナウィルス蔓延防止のため、パフォーマンスも祝賀会も中止なので、とても残念です。
望月小学校の校長先生。
望月小学校では、書道の授業が始まる3年生になると、天来自然公園を見学します。
なんでも、比田井南谷の「電のヴァリエーション」と大澤雅休の「鎧戸」が人気なんですって。
校長室には筆ペンが20本置いてあり、生徒がことばを書いて校長先生に見せるのだそう。
楽しそうですね。
そして私の講演です。
今回は地元のみなさん40名が集まってくださいました。
最初にアンケート。
みなさんの中で、字が上手になりたい方がいらっしゃったら挙手してください。
(ほとんどの方が挙手。)
そうなんですよね、みんな字が上手になりたいんです。
では、どうしたら上手になれると思いますか?
字が上手な先生にお手本を書いてもらって練習しますか?
そうすると、先生そっくりの字が書けるようになりますが、そうしたいですか?
先生の字を習うと、そのお弟子さんは先生よりちょっと下手。
そのまたお弟子さんはさらにちょっと下手。
おそろしい連鎖。
書道はだんだん劣化していく・・・(恐)。
そんな方法はだめだと言ったのが比田井天来です。
というわけで、まずは「臨書とは何か」。
「臨書」とは、現代人ではなく、書の歴史的名品をお手本にして練習することです。
天来の「学書筌蹄」と「天来習作帖」の図版を使って、天来が考えた臨書についてお話ししました。
その後は、天来自然公園の石碑に刻された作品の書者である比田井天来・比田井小琴・上田桑鳩・桑原翠邦・金子鷗亭・手島右卿・比田井南谷・石田栖湖・大澤雅休について、特徴的な臨書と代表作をご紹介しました。
食事のあとの記念撮影。
シャッターを押す瞬間だけマスクをはずしました。
上に掲げられている作品は、中央が比田井天来、左は桑原翠邦先生、右は金子卓義先生です。
集合写真は前列中央が私(講師だからしょうがない)、その右が佐久市長、そして望月小学校校長先生。
最後列天来落款の下が、天来祭りを主催する「未来工房もちづき」理事長の吉川徹さん、その右が臨書展審査員の加藤春輝先生、ムー教授。
中列右から2人目、メガネをかけているのが公園部会長の上野昭久さん。
そして、私の左が佐久市岩村田小学校6年年生の樋口冴香ちゃんとお母様。
実は、天来祭り開催に先立って、ちょっとしたニュースがありました。
「週間さくだいら」という地元新聞が主催した「こども新聞コンクール」の優秀作品に、なんと樋口冴香ちゃんが作った「天来新聞」が選ばれたのです。
天来の石碑を訪れて写真を撮ったり(場所がわからなくて何回も行った石碑もあったそう)、廻腕法と俯仰法で書いてみたり、すばらしい力作です。
紙面もきれいにまとめられています。
これはすごい! ということで、天来祭りにご招待しました。
将来は書家になりたいそうです。
期待の星!
それからもう一つ。
ムー教授が、「高橋無有(むう)」のペンネームで、「特別寄稿」に「日本の前衛書の光芒」を書いたことを私のブログで紹介したため、「ぜひ哲学のお話をしてください」と指名されたのです。
話したのは「臨書とヘーゲル弁証法」について!
比田井天来は、臨書を三つの時期に分けて考えました。
第一期は絶対的手本本位の時期。
第二期は自己本位の時期。
そして第三期は、手本本位でもなく、自己本位でもない、それらを超えた臨書の時期です。
「自己と手本が知らず識らず融合して、臨書におのずから余裕を生じ、筆意に自然味が加わって無理がなくなり、臨書の痕跡がおいおい抜けてきて、自運書を見るようになる。」(天来)
ムー教授はこれをヘーゲル弁証法で説明しました。
第一期が「正」、第二期が「反」、第三期が「合」。
そして、第三期に到達すると、「無」から「有」への転換がある。
これ以上書くと「違う」と言われそうなので、ムー教授に「臨書と弁証法」と題して、改めて論考を書いてもらいたい。
天来祭りが終わったあと、さっそく市長さんがツイッターに投稿してくださいました。
続いて、実行委員の伊藤盛久さんがフェイスブックに、そして理事長吉川徹さんもフェイスブックに書いてくださいました。
すごいですね!
さあ、次は11月20日、佐久臨書展の授賞式です。
どんな作品が選ばれたのか、ご紹介しましょうね。