7月4日(日)、書宗院展併催の講演をしました。
タイトルは「古碑帖と臨書」です。
今日は、内容予告のときには秘密だった「仙人の棲む山」についてご紹介します。
秘密にした理由は、最初にクイズをやったからです。
どんなクイズだったかというと
上の写真、中央に見える山の名前を当ててください。
会場は、しーん。
これでは遠すぎてわかりませんよね。
だんだん山に近づいていきますよ。
空に向かってそびえる三角形の山です。
まだわからないかな。
さらに近づきましょう。
ごつごつと岩が重なっているのが見えます。
このような山は日本ではあまり見ることがありません。
中腹になにか見えますよ。
ここで手があがりました。
「雲峰山ですか?」
惜しい!
さらに近づきます。
山の中腹に石碑が見えますね。
手があがりました。
天柱山!
大正解。
景品は、仿古堂さんが作ってくださった「天来清玩」大小二本セット。
天来愛用の羊毛筆を復元したものです。
腰がある羊毛で、穂が比較的短いので素朴な線が引けます。
羊毛初心者にもおすすめです。
碑邸(というよりも屋根と柱)の中にあるのは「鄭羲上碑」です。
ちょっと前方に傾斜しています。
この碑が建てられたのは511年なので、その後、いろんなことがあったのでしょう。
そういえば、雲峰山の論経書詩も傾いています。
こちらは地震があったためとか。
言い伝えによると、最初に天柱山に「鄭羲上碑」を作ったところ、石質が悪く、よく見えなかったので、雲峰山に「鄭羲下碑」を作ったとされています・
「鄭羲下碑」と比べると文字が小さいので、見えにくいです。
また、このような高所で足場を組むのもたいへんだったと見えて、精密な拓本は見たことがありません。
横田恭三先生の「書の旅55」に、鄭羲上碑の碑面写真が載っています。
右が鄭羲上碑(碑面)、左は鄭羲下碑(拓本)。
比較するため、文字のサイズを同じにしてみました。
文字の雰囲気はかなり異なっていますね。
(ほんとに同一人物の書?)
外界を見下ろしています。
階段ができているとはいえ、こんな高いところまで登ってくるのはほんとにたいへんです。
ここからさらに登ります。
「上遊天柱下息雲峰」題字です。
文字が大きく、しかも石面が磨かれているのではっきりと見えます。
磨かれすぎていて、違和感。。。。。
さらに上に登ります。
鄭羲上碑の真上に大きな岩盤があり、その基部に刻されているのが「此天柱之山」です。
細い線で、伸びやかに書かれています。
魅力的な書です。
さらに登っていくと、頂上直下の東側に大きく突き出た岩があります。
その東南に面したところに「東堪石室銘」が刻されています。
書斎にこもって字を書くのと比べ、山に登り、自然の岩肌に字を書くのは気持ちがいいと思います。
「雄大な野外芸術」だとおっしゃったのは、松井如流先生でした。
次は、巨大な文字が一面に刻された圧巻の風景です。
中国の名峰、泰山。
ロープウェイがありますが、それには乗らずに、歩いて登ります。
途中で小道にわかれ、木立の中をしばらく行くと、目の前がひらけて眼下に白い岩肌があらわれます。
その岩盤一面に文字が彫られているのです。
大きな文字が広大な岩盤を埋め尽くし、はるか彼方まで延々と続きます。
のびやかで、スケールの大きい文字です。
私が見ているのは「蘭」という字。
左から、桑原翠邦、比田井天来・小琴、金子鷗亭、三宅半有。
後ろに掛けられている対幅の左上に「蘭」が見えます。
泰山金剛経の文字を選んで組み合わせた緑色の拓本です。
天来が好んで掛けていたようです。
石碑、とくに摩崖刻石は、現場に行ってみるとおもしろい発見があります。
そのうちに、雲峰山についてもご紹介しましょうね。
SHOP
鄭道昭題字小品(テキストシリーズ) 1210円
中国山東省の山の岩肌に刻された鄭道昭の題字の中から、傑作24種を掲載しました。
書の旅55 横田恭三著 2750円
中国各地に点在する名所旧跡を紹介する、書作家のためのガイドブック。
泰山金剛経 4180円
一字約50㎝四方の大きな文字は、おおらかで雄大な書風。
泰山の岩盤斜面一面に刻された金剛経。劉石庵旧蔵の縮印本全文を完全複製しました。