光に満ちた線の書家 比田井小葩

2017年6月2日

1997(平成9)年4 月、ロンドンのオークションハウス、クリスティーズ(Christie's)に、書の作品が出品されました。

比田井小葩

作者不詳の二曲屏風です。右は、「小さな碧い蝶がただよい飛び散りみだれる。愛の手紙の青い破片がひらひら風に舞うようだ。」

左は「地面に近く美しい蝶 鄭重な性質の蝶が つばさの本をひろげて 色刷りの模様を見せている。」

共にリルケの詩です。飛び乱れる蝶とじっと動かない蝶。静と動が織りなすリズムの対比。

比田井南谷 小葩

作者の名は比田井小葩。比田井小琴に師事し、後、比田井南谷と結婚して、作家として、詩文書の世界にユニークな風を吹き込みました。

比田井小葩

小葩の父母は、内村鑑三を師と仰ぐ敬虔なクリスチャンでした。聖書のことばを書いた作品は、おおらかで明るい光に満ちています。

比田井小葩

北原白秋の詩です。子どものようにあどけなく、無垢な世界。

比田井小葩

1970年、小葩は南谷に、比田井天来の生誕百年を記念して、大規模な天来展の開催を提案します。書学院同人と共に計画を練り、準備に奔走。1972(昭和47)年、ようやく「生誕百年比田井天来展」(三越)の開催にこぎつけますが、5 月23 日、祝賀会席上で倒れ、25日に息を引き取りました。享年58歳でした。皇太子妃殿下美智子さま(現、皇后陛下)が展覧会ご鑑賞の際に小葩の死をお知りになり、小葩の枕頭に生花を賜わりました。上の作品は、御礼として美智子妃殿下に献上した小葩の作品です。

比田井小葩  私は
  誰の字でもない
  私の字が書きたい

 心のどこかにあるものが
  作品の中に感じられ
  一見何でもないような
  それでいていつまでも
  見あきないような
  香りの高い字が書きたい

 素朴な喜びや
  暖かさがあふれた
  字が書きたい

 忘れられた幼なさを
  もう一度呼び戻し
  悲しみや苦しみ
  なやみや怒りさえも
  持っている
  正直な字が書きたい

比田井小葩の作品と生涯をまとめたホームページはこちらです。

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書道