第六回「比田井天来・小琴顕彰 佐久全国臨書展」の特別陳列は、比田井天来が書いた書碑の拓本です。
まずは
大正13年に書いた「松方正義の墓」。古法を発見した直後、剛毛筆を使った楷書です。松方正義は書が好きで、比田井天来から書の話を聞いたり、古典名品を見たりするのを楽しみにしたそうです。天来の長女、比田井ゆり子が二人の交流について書いていますが、当時の政治家の教養はとても深かったことがわかります。お墓は青山墓地にあるそうです。
古法発見のとき、天来の共同研究者だった松田南溟のお墓です。書学院本雁塔聖教序(袖珍本)は南溟の手装です。南冥は細楷の名手でもありました。木簡の写真の横に朱で書き込んだ小字は見事です。
ライオン宰相の異名をとった浜口雄幸の墓。これも青山墓地です。「DVD・比田井天来の生涯」でご紹介しましたね。
そしてこれは最晩年の「慰霊之碑」。同郷の名医、岡田対山が、治療の甲斐なく他界した人々の霊を慰めるために、天来に揮毫を依頼した碑です。ここから見る風景は絶景です。田園の中に天来生家や天来自然公園が見えます。佐久市にある比田井天来の書碑についてはこちら。
これが拓本です。のびやかな文字の細部まで鑑賞することができますね。碑陰(左側)の行書は、天来の最高傑作だとおっしゃる方がいらっしゃいます。
ガラスケースには、田宮文平先生ご所蔵の「学書筌蹄」初版本が展示されます。田宮先生のご尊父、中台青陵先生がお買いになったものだそうです。
特別展示は、佐久市立近代美術館1Fの第一展示室。ほかにも天来書碑の拓本が展示されますので、臨書展鑑賞の後は忘れずに立ち寄ってくださいね。