3月19日(土)朝、新横浜から新幹線で広島に向かいました。広島駅でお昼を食べて、呉線で矢野駅へ。お迎えに来てくださった池尻琇香先生と久保田幸次さんの車で熊野町へ向かいます。筆の里工房へ行くには、バスを使うより、矢野駅からタクシーが便利みたいです。
翌日はあまり時間がとれなさそうなので(講演するし)、同時開催の門流展を先に見学することになりました。仿古堂、久保田号、一休園、長栄堂で開催されています。
まずは老舗、仿古堂さんへ。天来と小琴の作品をたくさん所蔵してくださっています。それにしても、午前中は雨っぽかったのに、いいお天気♡
上田桑鳩先生考案の「先揃え」の筆(暖心)をはじめとする数々の名筆で知られる仿古堂さん。天来と小琴は筆の里工房で展示されているので、ここは門人のみです。物故者に限られていますが、すばらしいコレクション。上田桑鳩・桑原翠邦・金子鴎亭・手島右卿・石橋犀水・大沢雅休・鈴木翠軒・井上桂園・宇野雪村、もうたいへん。戦前戦後の巨匠たちに愛されたことがよくわかります。
これは棟方志功が大筆を注文した時の手紙。「これくらいの大きな筆が欲しい」という、原寸大の絵入りです。わかりやすい!
大家が揮毫した筆のラベルも大切に保存されています。田宮文平先生が「日本の近現代書がここに凝縮している」とおっしゃったそう。貴重なものです。左下は比田井小琴の「柳のまゆ」。
物故者だけのはずが、高橋蒼石先生の名前が(怖)。あっ、所蔵者ね。作品は比田井南谷のものでした(ほっ)。
社長の丹羽さんは以前、書道テレビに出演してくださったので、みなさんご存知ですね? ねっ(断定する)。
次は久保田号さん。手島右卿先生のお書きになった書が看板になっています。こだわりの羊毛筆「墨吐龍」「寿昌」は、手島右卿先生命名。「細光鋒」という最も細微な原毛を吟味精選した最高級の筆です。
久保田号さんのコレクションもすばらしいものです。手島右卿先生の「墨吐龍」や青山杉雨先生を初めとする扁額もすばらしかったのですが、ガラスに入っていて反射してしまうので、条幅をご紹介しましょう。
右から日下部鳴鶴、巖谷一六、中村不折、手島右卿、桑原翠邦。ちなみにこの画像は数カットを一枚に編集しています。こんなふうに並んで展示されているわけではありませんので、念のため。
この日はあっという間に過ぎ、夜はもちろん大宴会。翌日の講演のために、私は早めに帰ったのでした。ほんとですったら。(ホテルで飲んだけど)
翌日もいいお天気♡ ここはもちろん「筆の里工房」です。講演しなくっちゃ。
タイトルは「比田井天来・小琴」。天来の書の変遷、俯仰法の実際、臨書、天来に従いつつ独自の書を書いた妻小琴、そして、熊野町と天来の深いつながりなどを、スライドでご紹介しました。
定員100名のところ、130名もおいでくださったそうです。ありがとうございました。
熊野町に所蔵される作品が展示されているスペース。初めて見る作品ばかりです。
久保田号さん所蔵の作品。伸びやかで潤い豊かないい作品ですね。
そして、今回の目玉はなんといっても
天来といえば誰もがイメージする写真のオリジナルプリントが発見されたこと。なんと、撮影された日にちまでわかりました。弊堂とは竹澤堂さんで、ご遺族が大切に保管してくださっていたのです。感激! 竹澤堂さんと天来は、商売を抜きにした家族ぐるみのおつきあいをしていた、という情報もあります。天来のこの表情を見れば、信頼の強さがわかりますね。
そしてそしてそして、ここで書いている作品があったのです! 試筆なので、左右の紙の幅など作品として完成されたものではありませんが、なんてのびやかな線でしょう♡ できあがった筆に対する満足感が隅々にまで見えるではありませんか!
驚くなかれ(驚いちゃうけど)、このときに使った筆も保存されていました。日にちまで銘に刻されています。こんなに美しい状態で残っているなんて、竹澤堂さんが、いかに大切に思ってくださったか、伝わってきます。じーん。
展覧会の前に、こんな写真があることは教えていただいていました。竹澤堂さんのお宅です。
写真にあった作品がこれ。昭和9年といえば、天来が剛毛筆から羊毛筆に変えた大事な時期です。熊野町との交流が天来の作品を変えたのかもしれないと思えてきます。
今回の発見はそれだけではありません。筒井ゆみ子先生が連載してくださった「たびかがみー昭和初期のフォト紀行」で下巻だけ紹介した「たかさご島の思い出」上巻が発見されたのです。
たかさご島は台湾のこと。天来と小琴一行は昭和10年、熊野町を訪れ、次に台湾へ行ったのです。椰子の木の下にしゃがんだ天来と小琴。ほかにも楽しい写真がたくさん出てきます。「たびかがみ」の続きを新しく始めたいと思っています。
ちなみに、天来が他界した昭和14年の11月、広島産業奨励館、今の原爆ドームで開催された遺墨展のスナップと思われるもの。一番右が竹澤堂さんです。
最後に、天来没後も熊野町を訪れた比田井小琴の短冊をご紹介しましょう。仿古堂さん製作の小筆「柳のまゆ」を歌った短歌です。もちろん、仿古堂さん所蔵。
細筆 柳のまゆをめづる歌 小琴 仿古堂様
井原家にやどりてよめる
たらちねに つかふるさまも 筆の毛の そろひてゆかし わかきいもとせ
とものやかたにてよめる
きみがため にほふいとはぎ いとすすき つゆのみだれも うるわしきかな
細筆やなぎのまゆをめでてよめる
いのちげの つよきがうれし 青柳の まゆよりほそき すがたなれども
その後は、前日行けなかった一休園さんへ。こちらでも天来門流はじめ大家の作品がたくさん展示されています。休日も開館してくださって大感謝。(長栄堂さんはお休みで行けませんでした・泣)
最後の最後に、関係者の記念写真。池尻先生、本当にお世話になりました。そしてみなさん、お疲れ様でした。
長ーーーーーいブログになってしまいました。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
疲れた。。。。。