漉いたままの状態の紙を素紙(そし)あるいは生紙(きがみ)と言います。本画宣紙や褚紙(ちょし)、雁皮紙(がんぴし)、三椏紙(みつまたし)などは素紙です。これに対して礬水(どうさ)を引いて渗み止めをしたり色染、型押(水印)、金銀箔押、砂子振り、さらには手描きの絵を添えたりしたものを加工紙、あるいは熟紙(じゅくし)と言います。
これらの紙は「書の紙」の標本紙編で見る事が出来ますが、ここでもすでに多くの紙が姿を消しています。水印䇳、仿古䇳、冷金䇳、虎皮箋などは現在でも製造販売されており、廉価ではありますが、残念ながら当時のものとはかなりの違いがあります。染の退色、金銀の変色や剥げ落ちなど、製法の断絶や低廉化は、本画宣紙の品質を含め大きな問題であります。古い「蔵経紙」や「梅華玉版䇳」「蠟䇳」などを目にする折にその事を痛感せずにはいられません。
仮名表現に用いる美しく装飾を施された紙を仮名料紙といいます。そこには日本の加工紙の美の極致とも言える雅の世界があります。古筆の原本の料紙作りを再現伝承する貴重な技法です。
全懐紙、半懐紙を中心に多種多彩ですが、古筆の原本そのものを模した臨書用紙や戦後の大字仮名用の画雅紙にも応用されています。また写経用紙にも料紙写経の世界があり、平家納経を模した装飾写経の用紙もあります。
主な技法
礬水引 墨流し
唐紙 もみ紙 具引き
継ぎ紙(切り継ぎ、破り継ぎ、重ね継ぎ)
染め紙(引き染め、漉き染め、ぼかし染め)
箔(切箔、野毛、砂子)
村上翠亭・福田行雄共著「かな料紙の作り方」(二玄社)一読をおすすめ致します。
こうした料紙や加工紙の世界を見ると、書は本来渗みのないものであった事に気付きます。中国や日本の古典、古筆がそれを語っています。書(文字)を渗ませない為に加工を施し、さらに書の品格、芸術性を高める為に工夫を凝らしていったのでしょう。