筆3 新生と消滅(文化大革命以前の唐筆)
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筆
- 日本に於いて新しい形の筆とそれに伴う新たな書表現が誕生し、熱気を持って進展する中、お隣りの書のご本家中国では別の熱気、いや狂気が発生しておりました。文化大革命(1966〜1976)です。特権階級の粛正と追放、伝統文化の破壊の10年について今ここで論じる訳にはいきませんが、筆への直接的な影響は記録しておかなければなりません。すでに1956年に国営上海工芸が設立され、李鼎和の名柄を中心に名称を変更して製造を開始しておりましたが、他の店も文革とともに暖簾を廃止され、新しい店に統合されていきました。
また、筆名も次のように変わっていきました。
- 騰蛟起鳳→江→蓋峰一号
- 墨海騰波→山→蓋峰二号
- 群鴻戯海→如→蓋峰三号
- 横掃千軍→此→蓋峰四号
- 宛若游龍→多→蓋峰五号
- 長鋒條幅→嬌→蓋峰六号蘭蕊式(9)(精選仿蘭蕊式宿純羊毫)→東方紅(10)→蘭蕊羊毫(11)
- 福→労禄→働寿→最喜→光慶→栄
- 経→四→頂峰一号
- 天→海→頂峰二号
- 緯→翻→頂峰三号
- 地→騰→頂峰四号
- 謂→雲→頂峰五号
- 之→水→頂峰六号
- 才→如→頂峰七号
- 群→群賢→英畢→畢至→至写奏→写巻
文革により忽然と姿を消してしまった古き暖簾の唐筆(12・15・20・21)ですが、その価値はいまだに衰える事はありません。その再生が何度か試みられましたが、残念ながら似て非なるものになってしまいました。中国の書は今日でも滲み掠れのない表現です。現地で見る筆も、日本人向けの捌き筆もない訳ではありませんが、基本的にはのりで固めたオーソドックスな姿です。もちろん以前と材料のありようも違っていますし、その処理方法も異なります。その事を含め、技術の伝承と断絶の恐ろしさを痛感せずにはいられません。
恐ろしさと言えば、数年前に善蓮を訪れた折に、某工場長に、李鼎和の旧居へ連れて行って欲しいとお願いをしてみました。快諾を得たものと思いきや、昼食後断られてしまいました。その時の工場長の申し訳なさそうな表情が印象的で、そこには李鼎和と文革の人には見せられない何かがあるのだろうと、変に納得してしまいました。
- 今回紹介の筆
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- 玉蘭蕊(7)
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- 玉蘭蕊(8)
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- 仿蘭蕊式(9)
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- 東方紅(10)
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- 蘭蕊羊毫(11)
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- 玉版金丹(12)
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- 書成蕉葉文猶緑(13)
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- 鉄画銀鉤(14)
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- 冬料純狼毫(15)
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- 六純羊毫(16)
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- 純羊毫書画(17)
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- 横掃千軍(18)
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- 墨海騰波(19)
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- 熊豹大将(20)
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- 熊豹大将(21)
- 最終更新日:2014年11月13日