2014年8月13日

墨場必携:近代詩 立秋 『文語詩稿五十篇』より「上流」 宮澤賢治


              
0811月14.8.11IMG_8388.jpg                                            26.8.11 東京都清瀬市


   秋立つけふをくちなはの、沼面はるかに泳ぎ居て、
   水ぎぼうしはむらさきの、花穂ひとしくつらねけり。
 
   いくさの噂さしげければ、蘆刈(あしかり)びともいまさらに、
   暗き岩頸(がんけい) 風の雲、天のけはひをうかゞひぬ。

              「上流」(『文語詩篇 五十篇』より)宮澤賢治


              
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  秋立つ:立秋のこと。本詩稿は1927年の作。この年の立秋は新暦の8月8日。
  くちなは:蛇
  水ぎぼうし:ミズギボウシは近畿から中国地方に分布する植物。
          本詩稿の植物はユリ科の多年草コバギボウシかとの推定あり。
 (土岐泰「《文語詩稿》の植物」『弘前・宮沢賢治研究会会誌7』平成2年12月)
  蘆刈びと:蘆(あし)を刈る農民または農民一般を指すか
  岩頸:火山が侵食されて火成岩が円筒形に地表に現れて残った地形。
     その下にはマグマ溜まりがあって火山爆発が起きることがある。
  
              
0809コバギボウシP8090090.jpg                                    コバギボウシ 26.8.9 東京都清瀬市
  



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