墨場必携:近代詩 うたがふをやめよ 宮澤賢治
コゲラ 26.3.4 東京都清瀬市
うたがふをやめよ 宮澤賢治
うたがふをやめよ、 林は寒くして、
いささかの雪 凍りしき、 根まがり杉も のびてゆるゝを。
胸張りて立てよ、 林の雪のうへ、
青き杉葉の 落ちちりて、 空にはあまた 烏な(鳴)けるを。
そらふかく息せよ、 杉のうれ(末) たか(高)み、
烏いくむれ(幾群)あらそへば、 氷霧ぞさつと ひかり落つるを。
ハシブトガラス 26.3.11 東京都清瀬市
杉のうれ たかみ:杉の梢が高いので
「うれ」は末(うれ)。
「たかみ」は 「形容詞語幹+み」 の語法。
「A(を)〜み」の形で「Aが〜なので」の意味を表す。
26.3.10 東京都清瀬市
宮澤賢治[明治29(1869)〜昭和8(1933)]作。
「文語詩稿 一百篇」に収められた一篇。
最終稿までに筆者による題の記載は無く、冒頭の一句を仮の題として伝えている。
ジョウビタキ♀ 26.3.6 東京都清瀬市