輪島塗の※沈金の作品「秋乃野」。赤トンボが萩の咲く秋の野原を舞っています。この時期にピッタリな作品ですね。私の一番のお気に入りでもあります。

萩は秋の七草の一つ。花言葉は「思案、柔軟な精神」とのこと。
作品は花(蕾)を一番手前に出し、葉の色を金、銀、銅、廃銀色の4色を使い分けて其々の深度を僅かに変えることで奥行き感を出しています。赤トンボは萩の葉のよりも前面に出し、羽根は掠れるように表現することで透明感を演出しています。

この作品は眺める度にしばし時間を忘れて見入ってしまいます。この作家は過去の輪島塗にあった絵柄から作品を創るのではなく、自分の「好きな絵を輪島塗で描く」ことが根底にあったようです。いずれも30年以上前の作品とは驚きです。

作家はそれまで主に金箔や金粉を使っていた沈金を様々な金属(粉)の再現色を独自に研究することで新たな色彩表現の領域を切り開きました。輪島塗の沈金の最大の功労者といえます。

ギャラリーではこの後も季節を感じる作品を展示予定です。乞うご期待下さい。

※沈金
作品の表面にノミ等の刃物で点や線で文様を彫り、窪みに金箔や金粉をはじめ着色した金属粉を埋め込む漆器の装飾技法。輪島塗の沈金は江戸時代の後期に会津地方から伝わったといわれています。