2009年11月19日
天遊園
「天遊園」とは甲府市の富岡敬明邸庭園の名称である。この大作はまた梧竹の隷意をふくんだ楷書の一体を示していて、大きな磔法(天、遊、従、題のシンニョウ等の終画)が印象的である。これを石に刻んで建てることを考えていたのだと聞いている
富岡敬明(1822〜1909)は旧小城藩士、梧竹とは2人の母が姉妹で、敬明が5歳年長のの従兄弟である。維新後伊万里県(佐賀)、山梨県、名東県(徳島)、熊本県の副知事・知事をつとめ、熊本では西南の役で西郷軍と戦い、のち三角開港などの治績をあげた。熊本県知事退官後は山梨県里垣村に住し、男爵、貴族院議員となった。書画篆刻を善くしとくに漢詩に秀で「双松山房詩史」をのこしている。
甲府の邸は当時モダンなバルコニーをそなえた洋風の建築で、大きな松樹が2本あるのにちなんで「双松山房」と称した。邸は山を背にした高台にあって、斜面に従ってひらかれた広大な林泉が「天遊園」である。写真は2005年11月に梧竹の会員たちが池畔でとったスナップで、陽光に映える紅葉の錦がすばらしい風景だった。
人工を加えた庭園といった風情ではなく、自然の山林そのままの姿に池や祠堂を配した大らかなたたずまいは「天遊園」の名そのままの趣きで、さながら富岡敬明その人を偲ばせるものであった。梧竹筆の「天遊園」もこの林泉にふさわしい書風で、石碑に彫って池畔の木陰に建てれば、まさに林泉の空気にぴったり溶け込んだにちがいない。
「天遊園」「双松山房」2作とも小城市立中林梧竹記念館の梧竹特別展に展観されます。
「天遊園」「双松山房」2作とも小城市立中林梧竹記念館の梧竹特別展に展観されます。
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