2009年3月25日
点線のヴァリエーション その3
1月22・29日の点線のヴァリエーションその1・2では、篆・隷書に現れる点線を観察し、梧竹独特の点線が、金文の学書とともに展開することを検証し、点線が早い時期に楷書の中にも出現することを見出した。そして、ついには草書にもおいても随所に点線が出現することになり、梧竹の各書体すべての書線が点線によって成立するに至ったのである。
図1「光」は78歳の連綿草書で、最終画の上に跳ね上げるところに現れた点線。こうしてみると、一見普通の棒線にみえる書線も実は点線であって、点と点との間隔が小さくなって、ついには点が密着し連続して棒線の形となるものと考えられる。
図2「滴」は先週のブログ「早起即事」一行目中ほどから転載。「沈々」からサンズイへと連綿で繋がった、全体としては大きな点線だ。サンズイを構成するのが3つの潤筆部分、その間の渇筆部分は連綿線となっている。書線の幅はずっと一定のまま変わらない。
図3は82歳「月」。こういうのをみると、文字全体が、大きな点線で構成されてしていることがわかる。梧竹は連綿草書を完成したころには、点の大きさや形や間隔など、点線を意のおもむくままにコントロールする妙技を発揮している。
あと85歳の作例を紹介しよう。
図4「山」の横画、図5は「七十」十の長い縦画、図6は「雲」アメカンムリの横画に現れた点線である。雲ではアメカンムリのあと、「云」の縦の点々も、文字通り点線になっている。
◎図版はすべて徳島県立文学書道館の提供による。
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