ひと粒のレーズン その1

 一粒のレーズンを手にのせてみよう。干し葡萄のことである。これは是非ともみなさん自身で実際に試していただきたい。絶対のお奨めです。そして邪魔の入らないところへ行こう。

 まず、指先で触ってみよう。表面の感触。ざらざら?かさかさ?しわしわ? 多少ねっとりした感触もあるかもしれない。これを出来る限り細かく正確に感じてみる。次に慎重に押して弾力を確かめよう。

 さらに目を閉じてこれを続けると不思議な事ことが起こる。・・・・

 

そうすると指でいじっているレーズンが、みるみる膨らんでくるように感じる。まるで数センチの物体になったようだ。(そう感じられなくても気にしないで先へ)

 さて目を開けよう。今度は目で出来る限り細かく観察しよう。形、色。しわの入り方は? 表面の艶は? 光が当たって光っていないか? 部分によって色が変っていないか?

 鼻のところへもっていこう。匂いはどうだろう。何の匂いを連想させるだろうか。

 

 そしていよいよ口にいれよう。でもゆっくりだ。まず唇に挟んで感触を味わう。舌の上に運んで、先ほど指先で味わった感触を舌で味わう。唾液は出てきたか。

さて次にそっと歯に挟んで、歯の先で感触を確かめる。そしてゆっくりと噛みじはじめていい。でも極端にゆっくりと。普段の「噛むこと」、「飲み込む」ことを超スローモーションでやってほしい。

ひとつのレーズンの粒が変形されて、やがて裂け内部の秘密が暴かれる。それはやがて大小の複数の部分に壊される。それは舌に載って味を開花させる。口の空気を鼻に抜けさせると香りがする。先ほどの外部からの香りより強い。レーズンの破片は舌や喉の粘膜の上をゆっくりと食道に向かって移動して、やがて消えてゆく。

 

以上の過程すべてに5分か10分はかかるはずである。そのすべてを「味わい」つくしてみよう。これは実際にやって下さらないと意味がない。家にない人はさっそくお店に行ってレーズンを求めよう。続きは次回に書きますので、まず「レーズン鑑賞」をしてから読んでください。

 

さて申し遅れましたが、比田井和子様のご厚意によりこれより天来書院様のWeb上でブログを書かせていただきます。ネット奥手の私に取りまして初体験でドキドキしています。どうかよろしくお願い申し上げます。

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