2010年1月12日
夕映えのなかで
千さんのブログ「清流の里から」の12月24日付け「ご褒美」に美しい夕焼けの紹介がありました。「綺麗な『朝焼け・夕焼け』はなんだかパワーをくれる気がします。」とおっしゃっているのが印象的でした。
比田井さんの(「酔中夢書」)12月22日「多摩川の夕陽」の写真も見事です。ここには筆者好みの、水面に光の反射する遊びが加わっています。なんで夕焼け(朝焼けも)はこうも人の心を捉えるのでしょうか。
私の大好きなシューベルトの歌曲に、Im Abentrot 「夕映えのなかで」というのがあります。きわめて簡潔なコラール(賛美歌)のようなピアノの伴奏にのって、静かな息の長いメロディが歌われます。
歌詞はカール・ゴットリープ・ラッペのもの。 27年前初めてのリサイタルのさいに自分で訳したものを手直ししてみました。
おお あなたの世界の何という美しさ
父よ 黄金の光が注ぐとき
あなたの輝きが 地上に下るとき
塵も空に光を描き
雲のなかにきらめく紅の光が
私の静かな窓辺に沈むとき
私は歎いたり ためらったりできるのか
否(いな) 私は胸に抱こう
すでにここに在る あなたの天国を
そして私の心が砕け散るまえに
この灼熱を飲み 光を啜(すす)ろう
・・・
朝焼けも、夕焼けも光学的には似たような現象ですが、心理的効果となると、これはだいぶ違うようです。それぞれにふさわしいようなキーワードを集めて対置してみました。
朝焼け: 前触れ 興奮 希望 期待 誕生 上昇 準備(体操) 青春 未来 春
夕焼け: 余韻 沈静 回想 感謝 死 下降 整理(体操) 晩年 過去 秋
日の出、日の入りはどちらも「活動の昼」と「安息の夜」の境界線上にあり、二つの世界が重なった不思議な領域ですよね。そのような一瞬を美しく彩る光のなかで、時間が止まり、そこにすべてを見てしまうような気持ちにさせられるのではないでしょうか。これは宗教的感情とも隣りあわせです。祈りを捧げるにふさわしい時間です。
夕焼け・朝焼けのときにもつような感情を探すなら、私の場合やはり音楽でしょう。音楽を演奏したり、聴いたりするときに、私はよくこのような「夕焼け効果」にずぶずぶとのめり込んでしまうことが多いようです。
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