台風が来たり、大雨が降ったり、時ならぬ寒さに冬のコートを急いで出したり、
親しい人の訃音が飛び込んで来たり、
今年の十月は落ち着かないひと月でした。
人を招くという尾花の穂
澄んだ光の中で輝きます。
時ならぬ花。
十月桜です。
高い空の下、
冴え冴えと澄んだ空気の中の桜は、春とは違う趣きです。
陰暦十月(現在のカレンダーではほぼ一月遅れです)の陽気のよい日を
小春日和と言います。
十月には、思いがけない春に通じる扉があるのです。
思いがけない と感じる花に胸を衝かれて
少し驚きながら 現実をふと離れたものが
慰安になることがあります。
しみじみと思い出す昔、若い日、
その時をともにして来た人たち、それを包んでいた風景。
思い出せば、すべて、なつかしいこの世の日々です。
季節が過ぎるように、私たちもみな年をとり、
生き物としてやがて過ぎて行くでしょう。
四季の草花のように、野原の小鳥のように、
自然の中の生き物の一つとして、
私たちの命もまたあるのです。
ここ去りて いつか 往くとき
心たのしく 想ひかへさむ
ノヴァーリス「青き花」小牧健夫 訳
“ タダイマー ”
“ ミヤチャン カエッテキタ ”
みやは内気で人見知り。
外に関心はあっても、遠くに行く気はさらさらありません。
それでも、ちょっと外に出てみたい。
散歩仙人はみやに甘く、居間のガラス戸をよく開けてやります。
そしてすぐ閉める。
ひたちは外に出さないためです。
みやは飛び出しますが、その一歩くらいの位置にコロンとするだけ。
軒下の三和土にいて、庭の土の上にも降りません。
ちょっと外の空気を吸って、庭に来ているシジュウカラを眺めたり
すると、すぐ “モー オウチ ハイル ” と言う。
“ イイナ ミヤチャン ”
ひたちは 外に出てしまうと気が済むまで帰って来ないので、
横浜に越してきてからは、外出厳禁です。
清瀬と違って、周辺に猫環境が整っていないので、
帰って来られなくなる恐れが強いのです。
“アケテー アケテー オウチ ハイル!! ”
はいはい すぐ開けるから
ひたちには羨ましい待遇ですが、内弁慶のみやは、
長く外にはいられない。
うっかりこちらがその場を離れてしまって、
すぐに入れてやるのを忘れてしまうと、
(それでも みやの場合はよそへ行ってしまう心配はありません)
みやはガラス戸の外側の狭いレールの縁に上がって立ちあがり、
ガラスに両手で張り付く姿勢でミャーミャー泣いています。
本当に心配になるらしいのです。家に入れなくなることが。
可笑しいけれど、かわいそうで、いつも大急ぎで戸を開けるので、
まだその姿の写真は撮れずにいます。
猫はそんな姿勢をとることが時々はあり、
スパイダーキャットと言うようです。
“ ボクモ 行キタイ”
ひたちゃんは いつまでも帰ってこないでしょ。
前に清瀬で出掛けちゃった時も、みんなで呼んでも
“ ヘヘッ ” って言って、遊びに行っちゃったでしょ。
家の猫家族も高齢猫の部類に入る年齢になりました。
元気で長生きしてもらいたい。
無事に、出来るだけ長い寿命をともにしたいと願います。