思いがけないもの〈秋も深まる十日 その3〉

2017年11月4日

  台風が来たり、大雨が降ったり、時ならぬ寒さに冬のコートを急いで出したり、

  親しい人の訃音が飛び込んで来たり、

  今年の十月は落ち着かないひと月でした。

 

   人を招くという尾花の穂

   澄んだ光の中で輝きます。

 

 

   時ならぬ花。

   十月桜です。

 

   高い空の下、

 

 

   冴え冴えと澄んだ空気の中の桜は、春とは違う趣きです。

  

   陰暦十月(現在のカレンダーではほぼ一月遅れです)の陽気のよい日を

   小春日和と言います。

   十月には、思いがけない春に通じる扉があるのです。

    

   思いがけない と感じる花に胸を衝かれて

   少し驚きながら 現実をふと離れたものが

   慰安になることがあります。

 

   しみじみと思い出す昔、若い日、

   その時をともにして来た人たち、それを包んでいた風景。

   思い出せば、すべて、なつかしいこの世の日々です。

 

   季節が過ぎるように、私たちもみな年をとり、

   生き物としてやがて過ぎて行くでしょう。

 

 

  四季の草花のように、野原の小鳥のように、

  自然の中の生き物の一つとして、

  私たちの命もまたあるのです。 

 

 

  ここ去りて いつか 往くとき

  心たのしく 想ひかへさむ

          ノヴァーリス「青き花」小牧健夫 訳

 

  

 

    “ タダイマー ” 

 

 

    “ ミヤチャン カエッテキタ ”

 

  みやは内気で人見知り。

  外に関心はあっても、遠くに行く気はさらさらありません。

  それでも、ちょっと外に出てみたい。

  散歩仙人はみやに甘く、居間のガラス戸をよく開けてやります。

  そしてすぐ閉める。

  ひたちは外に出さないためです。

 

  みやは飛び出しますが、その一歩くらいの位置にコロンとするだけ。

  軒下の三和土にいて、庭の土の上にも降りません。

  ちょっと外の空気を吸って、庭に来ているシジュウカラを眺めたり

  すると、すぐ “モー オウチ ハイル ” と言う。

 

   “ イイナ ミヤチャン ”

 

  ひたちは 外に出てしまうと気が済むまで帰って来ないので、

  横浜に越してきてからは、外出厳禁です。

  清瀬と違って、周辺に猫環境が整っていないので、

  帰って来られなくなる恐れが強いのです。

 

     “アケテー アケテー オウチ ハイル!! ”

     はいはい すぐ開けるから

 

   ひたちには羨ましい待遇ですが、内弁慶のみやは、

   長く外にはいられない。

 

   うっかりこちらがその場を離れてしまって、

   すぐに入れてやるのを忘れてしまうと、

  (それでも みやの場合はよそへ行ってしまう心配はありません)

   みやはガラス戸の外側の狭いレールの縁に上がって立ちあがり、

   ガラスに両手で張り付く姿勢でミャーミャー泣いています。

   本当に心配になるらしいのです。家に入れなくなることが。

   可笑しいけれど、かわいそうで、いつも大急ぎで戸を開けるので、

   まだその姿の写真は撮れずにいます。

 

   猫はそんな姿勢をとることが時々はあり、

   スパイダーキャットと言うようです。   

  

    “ ボクモ  行キタイ”

 

   ひたちゃんは いつまでも帰ってこないでしょ。 

   前に清瀬で出掛けちゃった時も、みんなで呼んでも

   “ ヘヘッ ” って言って、遊びに行っちゃったでしょ。

 

   家の猫家族も高齢猫の部類に入る年齢になりました。

   元気で長生きしてもらいたい。

   無事に、出来るだけ長い寿命をともにしたいと願います。

 

 

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