かあちゃんは帰って来たか 〈猫デカメロン余聞〉

2018年6月24日

梅雨らしい細かい雨が続くこのごろ

 

 

紫陽花の花は時を得て きれいです。

 

 

北鎌倉の駅を降りて

東慶寺の前を過ぎ、

お馴染みの浄智寺の前を過ぎ、

 

 

道なりに、

整備された緩やかな、しかし紛れもない山道を、登ってゆくと

右手の斜面は色とりどりの紫陽花です。

 

 

 

 

 

坂を上り詰めたあたりにあるのが  建長寺。

上り、下り、坂の道沿いには、さすがに門前らしいお店が並びます。

 

        “ ヘヘ ”

 

台湾リスはこのあたり、どこにでもいます。

雨の季節も元気いっぱいです。

 

        “ ヘヘ ”

 

建長寺を過ぎてまもなく

緩い下り坂の途中

小径に入ったところには、ちりめん山椒の老舗「とも乃」のお店があるあたり

電信柱に張り紙発見

 

 

猫を探しています。

連絡先に「ペットレスキュー」の名が見えます。

家族が専門の猫探し機関に助けを求めたのでしょう。

古い張り紙らしく、色あせてボロボロになっていましたが、

まだ剥がされていないということは…

 

帰らない猫を思うと、よその話でも胸が痛みます。

猫は言葉が一般には通じないので、

初めて会う人間に対して、自分で自分の説明ができません。

迷子になってしまったら帰って来る手立ては乏しいのです。

 

家族と暮らす習慣の猫が、家族の保護のない暮らしで

無事に生きることは難しいと思われます。

自動車の走る街を知らないし、外歩きの猫との付き合い方も知りません。

コワイ人間がいることなど、まして知りません。

出掛けて帰って来ないことには、その猫の安否の不安を禁じ得ません。

 

 

以前、ひたち君がフラッと遊びに出掛けてしまった時、

それは、現実の時間としてはせいぜい3、4時間のことだったのですが、

幾日分にも感じられる長さの、重い苦しい時間でした。

http://www.shodo.co.jp/blog/hitati/2012/09/post-210.html

 

無事に帰ったからよかったものの、

もしあれきり会えなくなっていたら、

日々その消息を尋ね続け、生き死にを思い、

うっかり引き戸の鍵をかけ忘れていた家族は

6年経った今でも、きっと後悔に苛まれていたことでしょう。

 

 

    “ チョット サンポシテ キタ ダケ ダヨ ”

    その「ちょっと」でも心配なの。

    ひたち君は 名前呼んでも帰ってこないじゃない。

 

 

建長寺近くの張り紙の主は、今も眠れない思いなのでしょうか。

 

と、この張り紙、よく見ると

 

「※写真がないため、似た猫の写真を使用」

 

 え?

 

わざわざ猫探し機関を使ってまで探す割には、決め手の資料が甘いのでは。

そして、赤い囲みの中の説明はというと

 

「毛色:薄い茶トラ模様」

「体型:中型」

 

 

 

 

  “ チューガタ サイズノ ウスイ チャトラ ダケド ナニカ? ”

 

  ジョーチ君!

 

でも、ジョーチ君は、この山を下った浄智寺にもう何年も住んで働く職員猫。

墓地の裏の山に仔猫を捨てる人がときたまおり、

泣きながら山を下りて来る仔猫を浄智寺さんが養うというお話を

お詣りの人たちから聞いています。

みなし子のジョーチ君はお寺で養われて、お寺で働くようになった猫です。

張り紙の古さを考えに入れても、やはり別ネコでしょう。

 

この一帯に、薄い茶トラ模様の猫は繁栄しているのかもしれません。

張り紙の迷子の猫の名は「かあちゃん」

 

 

 

梅雨の しずかな雨のあい間、薄く射す陽が細かな光の粒のようです。

 

 

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