梅雨らしい細かい雨が続くこのごろ
紫陽花の花は時を得て きれいです。
北鎌倉の駅を降りて
東慶寺の前を過ぎ、
お馴染みの浄智寺の前を過ぎ、
道なりに、
整備された緩やかな、しかし紛れもない山道を、登ってゆくと
右手の斜面は色とりどりの紫陽花です。
坂を上り詰めたあたりにあるのが 建長寺。
上り、下り、坂の道沿いには、さすがに門前らしいお店が並びます。
“ ヘヘ ”
台湾リスはこのあたり、どこにでもいます。
雨の季節も元気いっぱいです。
“ ヘヘ ”
建長寺を過ぎてまもなく
緩い下り坂の途中
小径に入ったところには、ちりめん山椒の老舗「とも乃」のお店があるあたり
電信柱に張り紙発見
猫を探しています。
連絡先に「ペットレスキュー」の名が見えます。
家族が専門の猫探し機関に助けを求めたのでしょう。
古い張り紙らしく、色あせてボロボロになっていましたが、
まだ剥がされていないということは…
帰らない猫を思うと、よその話でも胸が痛みます。
猫は言葉が一般には通じないので、
初めて会う人間に対して、自分で自分の説明ができません。
迷子になってしまったら帰って来る手立ては乏しいのです。
家族と暮らす習慣の猫が、家族の保護のない暮らしで
無事に生きることは難しいと思われます。
自動車の走る街を知らないし、外歩きの猫との付き合い方も知りません。
コワイ人間がいることなど、まして知りません。
出掛けて帰って来ないことには、その猫の安否の不安を禁じ得ません。
以前、ひたち君がフラッと遊びに出掛けてしまった時、
それは、現実の時間としてはせいぜい3、4時間のことだったのですが、
幾日分にも感じられる長さの、重い苦しい時間でした。
http://www.shodo.co.jp/blog/hitati/2012/09/post-210.html
無事に帰ったからよかったものの、
もしあれきり会えなくなっていたら、
日々その消息を尋ね続け、生き死にを思い、
うっかり引き戸の鍵をかけ忘れていた家族は
6年経った今でも、きっと後悔に苛まれていたことでしょう。
“ チョット サンポシテ キタ ダケ ダヨ ”
その「ちょっと」でも心配なの。
ひたち君は 名前呼んでも帰ってこないじゃない。
建長寺近くの張り紙の主は、今も眠れない思いなのでしょうか。
と、この張り紙、よく見ると
「※写真がないため、似た猫の写真を使用」
え?
わざわざ猫探し機関を使ってまで探す割には、決め手の資料が甘いのでは。
そして、赤い囲みの中の説明はというと
「毛色:薄い茶トラ模様」
「体型:中型」
“ チューガタ サイズノ ウスイ チャトラ ダケド ナニカ? ”
ジョーチ君!
でも、ジョーチ君は、この山を下った浄智寺にもう何年も住んで働く職員猫。
墓地の裏の山に仔猫を捨てる人がときたまおり、
泣きながら山を下りて来る仔猫を浄智寺さんが養うというお話を
お詣りの人たちから聞いています。
みなし子のジョーチ君はお寺で養われて、お寺で働くようになった猫です。
張り紙の古さを考えに入れても、やはり別ネコでしょう。
この一帯に、薄い茶トラ模様の猫は繁栄しているのかもしれません。
張り紙の迷子の猫の名は「かあちゃん」
梅雨の しずかな雨のあい間、薄く射す陽が細かな光の粒のようです。