2008年1月22日

学書筌蹄

さあ、比田井南谷が横浜で再開した書学院出版部。次に発行したのは,大正10年から刊行を始めた、比田井天来の全臨集『学書筌蹄(せんてい)』の抜粋本です。

学書せんてい.jpg

もともと『学書筌蹄』は、代表的な碑帖12種を選び、20ヶ月にわたって全臨したもので、五百部限定、しかも20冊に分かれていました。そのそれぞれから抜粋して一冊にしたのが本書です。

新刊案内には、こう書いてあります。

俯仰法発見の成果を江湖に問い書壇を驚倒させた名著! 五十年後の今日もなお先見の明を示す考証的解説!

気合が入っていますよね。

南谷の本作りはこだわりに満ちていました。今のように簡単なスキャナなどありませんから、まる一日かけてカメラのライティングの調整をし、撮影、製版から刷版まで、満足のいくまでやり直しました。印刷は別の会社に出していましたが、インクの濃さはもちろんのこと、最初から終わりまで立ち会って、汚れたり紙粉が出るとそこでストップ、きれいにしてからまたはじめるのです。印刷屋さんもたまったもんではありませんが、よくつきあってくれました。

書学院出版部の信条というのがありました。

比田井天来の志をついで出版によって正しい書道の再興につくす。

良書を厳選し正しい釈文、解説を付す。

自家写真製版による独特な複製技術を駆使し、他社の企及しえない出版物の刊行につとめる。

楽しいっちゅや楽しいんだけど、お金なくなるわねー。でも知ったこっちゃないんです。気に入らなければ印刷物は捨てるわ、好きなだけ時間はかけるわ、しょっちゅう気が変わるわ、まーいーけどね。

てなわけで、いろんな楽しい(?)事件がありました。少しずつ教えちゃいますよ。

 

天来書院版『学書筌蹄抜粋』 https://www.shodo.co.jp/books/isbn-032/

前回の記事へ https://www.shodo.co.jp/blog/hidai/2008/01/post-17.html

前回の「出版秘話」へ https://www.shodo.co.jp/blog/hidai/2008/01/post-8.html

天来書院トップへ https://www.shodo.co.jp


同じカテゴリの記事一覧