お待たせしました。
もうひとつの目玉イベント、揮毫会。
審査員の先生方がその場で作品を書いて下さいます。
作品制作の秘密が垣間見られるかもしれません。
トップバッターを務めるのは、佐久市長・柳田清二さん。『書譜』より「四海知音」。
今年、特に台風被害のひどかった佐久市の長として、この言葉には特別な思いがあります。
書道をやってきたわけではなく、このイベントのため直前に練習しているということですが、
なぜか毎回堂々たる作品で見る者を驚かせてくれます。
この本番での強さはいったいどこから?
「失敗しない」市長です。
続いて山中翠谷先生。空海『灌頂記』、顔真卿『祭姪文稿』の臨書です。
先生が属する独立書人団は、とても素人には使いこなすことのできない長鋒の羊毛筆を活かした情熱的な線が特徴的です。
この墨を含んで、てろりと重くなった穂先!
言うことを聞かない(少なくとも私にはそう思える)穂先をコントロール。しかも、書きながら整えるのです。
力強さを持った作品が生まれました。
また一画一画が物語のように複雑な表情を持ち、線を目で追うのが楽しい作品です。
次は中原志軒先生。
前衛書が得意な奎星会。新しい書の可能性を引き出すために、ちょっと普通ではない筆も使います。
塼(せん=レンガなどの陶器)に刻印あるいは彫られた文字の特徴を表現。これも臨書です。
この小さな筆で、まるで引っかくように力強く書く様子に会場は驚きに包まれました。
しかしこれには理由があるのです。その答えは動画の再生時間5:09から…
そしてこのような洒落た作品に仕上がりました。
今度はゆったり堂々とした唐太宗『温泉銘』。羊毛筆を使っています。
お疲れのご様子(笑)。
どちらの先生も、心を込めふりしぼるようにして書くので、書き終わった後はへとへとです。
「最後は詰まっちゃった」とおっしゃいますが、この規模の大きさは並ではありません。
そして高橋蒼石先生。
臨書作品だけの展覧会を毎年開催する書宗院の理事長です。
羊毛筆ですが、短く太い穂が特徴的。比田井天来が使っていた筆に似ています。
豊かで素朴な線が『魯孝王刻石』にぴったりです。
今度は王羲之の草書『罔極帖』。筆は同じなのですが、まったく違った表現になっています。
情熱的でありながらも、過度な装飾のない渋みのある味わいです。
最後に、石飛博光先生。
おしゃべりが楽しい先生ですが、書く姿は真剣そのものです。
隷書の名品『乙瑛碑』の臨書。
筆を二本持つことで、線に様々な表情が生まれます。
普通のかすれでは出せない明るさがあります。
続いて藤原佐理『国申文帖』。佐理の書は、経験の浅い私などからしてみれば「難しい」の一言。
ですが造形的に魅力があることも確かです。どんな臨書作品が出来上がるのでしょうか。
見えづらいカットで申し訳ございません(汗)。
流れるような美しさと、心地よいリズム。
次も大きな作品です。
佐久市に新しく武道館ができるとのことで、そこに掛けられる予定の一作をこの場で書いてしまおうとのことですが、どんな作品になるのでしょうか。
じっくりと間合いをはかるように紙を俯瞰で眺めています。どんなイメージがわいているのでしょうか。
緊張の第一手。見てるこちらもハラハラします。揮毫会の醍醐味。
一気呵成に書いていき…
こんな大作ができあがりました。完璧なバランス!
先生方ありがとうございました。皆様大変お疲れなご様子でした。
大勢詰めかけた室内が水を打ったように静まり返り、咳払いもためらわれるような緊張感の中で、紙と筆の触れ合う音と、墨の香りだけが支配する張り詰めた空気は、動画ではお伝えできません。
この興奮はぜひ現場で味わっていただきたいと思います。どなたでも観覧可能ですから、次回は皆様もいかがでしょうか?
興奮の一日が終了し、次の日は「天来まつり」。
今年は比田井天来生家に訪れることになりました。
つづく。