2023/7/27(木)〜8/3(木)、東京都美術館にて「第67回 書宗院展」が開催されています。
書宗院(しょそういん)は、先日の記事『光ミュージアムにて「桑原翠邦が求めた書」展が開催されます』にてご紹介した桑原翠邦(くわはらすいほう)先生が創始した書道団体です。
古典臨書に重きを置く会にふさわしく、この展覧会では臨書作品のみが展示されます。
臨書によって培われた線の味わいを最も楽しめる展覧会のひとつです。
今回の特別展示は、創始者の高弟であり、2018年に亡くなられた淺沼一道(あさぬまいちどう)先生の遺墨展です。
比田井天来の弟子たちはみな古典臨書を非常に重んじていましたが、中でも桑原翠邦はその態度を最も色濃く体現し、それが書風にも現れていました。
この姿勢をまっすぐに受け継いだのが淺沼一道先生といえるのではないでしょうか。
古碑法帖類の研究に打ち込み、その高い見識は他の追随を許さないものでした。またその研究成果を後継の指導にも存分に活かした教育者としての面にも注目されます。
國學院書道研究会の指導をはじめ、実際にご自身が教職に就き、全国書写書道教育研究会の常任理事としても活動されました。
今回の企画のひとつである座談会では、淺沼先生の薫陶を受けた方々も参加され、会報創刊号から連載の古碑帖解説や、指導に接した当時の思い、また意外にも茶目っ気のある姿などが大いに語られました。
展示の中でも驚いたのはこの作品。高校生の時の作品だそうです。すでに貫禄がありますね。
書宗院の現役高校生たちも頑張っています。
昨今、展覧会攻略法のようなものが流行してでもいるのか、人の目を引き付けるための題材と書風が学生たちの作品の間で形式化していっているのが実情ですが、ここではそのような雰囲気とは無関係に、書と真摯に向き合っているように感じられます。
夏が盛りを迎える中、高雅な書の香りによってひとときの涼を得たような思いです。