雁塔聖教序 俯仰法の秘密
久しぶりに書道の話題です。最近、たくさんの方がこのブログを見てくださるので、基本的なことも載せていきたいと思います。「知ってるよー」という方も、もう一回おつきあいください。
比田井天来が古法(俯仰法)を発見した端緒となったのは、ほかにもいろいろありますが、まずは「雁塔聖教序(がんとうしょうぎょうのじょ)」。
袖珍本(しゅうちんぼん)と言って、縦17センチ、横9センチの小さな本です。開くと
拓本が貼ってあります。この拓本はものすごく精密にとられているので、筆遣いがよくわかります。筆法発見の端緒となったのもうなづけますね。
あれ? 赤と金色の点が見えますね。これは、天来と、共同研究者である松田南溟がつけたもの。よく見ると、点がある部分はなんだか不自然ですね。左下の「形」という字の三画目は二重に見えます。
五年前に荒金大琳先生がお書きになった「雁塔聖教序に関する記録」という本に、精密な碑面写真があります。
左ページの下三分の二の部分です。「以」の左下に小さな点があったり、「無」の三画目、横線の最後に点があったり、「形」の三画目に斜めの線があったり、不思議ですね。
南谷は、こう言っていました。「無」の横線は、きっと短く書いてしまったので、後で点を書き足したのだろう(これを補筆といいます)。ふつうの彫り師だったら、ごまかして一本の線にしてしまうのに、この彫り師は正直なので、そのまま彫ったのだろう。
みなさんはどう思いますか?
なお、この拓本は、テキストシリーズ「雁塔聖教序」の原本です。モノクロなので赤と金色の点は見えませんが、拓本の精密さはかわりません。唐時代のすこやかな楷書筆法を身につけるために最適です。
臨書に挑戦!(田村南海子ブログ)
営業部からの便り(橋爪ますみ・佐藤貞男)