山霞に向かう窓〈早い春の十日 その2〉

2017年4月4日

  松の枝に潜んで歌うウグイス
   

 

  歩いていると、身隠れの ウグイスの 声が聞こえます。

  春の歌のお稽古も進んでまいりました。

  北鎌倉の駅を出て、観光コースからは外れた道筋から、

  小さなお寺の脇のゆるい坂をのぼり、

  里山に分け入る小径を さらにのぼって行けば、

 

  モミヂイチゴ

                   

  静かな緑の繁茂する中に、知る人ぞ知る ギャラリーレストランはあります。

 

“ イラッシャイ ”

 

   これも、常連にはお馴染みの看板ネコ、チャオちゃんがお出迎え。

   人なつこい男の子です。

 

       冬の間にまた大きくなったかな。

                 “ ミンナニ イワレルヨ ”

       そうでしょう。ほっぺ幅が肩幅を超えたか。

 

  ベランダに置かれた素焼きの壺は 野鳥のためのゴハン入れ

 

   そこ自体、鎌倉に珍しくない小さな崖の縁のような場所に位置して、

   見晴らしのよい部屋の広い窓からは、鎌倉の山の、浅い深い谷、

   小さい あるいは大きい起伏に沿って広がる木立や、竹叢や、

   さまざまの植物の季節の姿を看取ることができます。

   今、遠景がほの赤く霞んでいるのは、花の気配を一杯に湛えているからでしょう。

   山の桜の季節はこれからです。

    

“ コンニチハ ”

      台湾リスはこの里山にもたくさん住んでいます。

 

                  “ ヘヘ ”

      野鳥のゴハンを頂きに、ちゃっかり毎日やって来るという。

      

“ イタダキマース ”

   食器の壺に逆さまになって体を突っ込んで、モグモグ嬉しそうに食べて帰るのが

   窓際の席からよく見えます。

 

 

   ここのお客は、窓の外に遠くまで広がる山の景色を見ながら、

   のんびりしたひとときを楽しみにくる人ばかり。

   猫もお客を気にしません。

   マイペースに遊び、飽きれば自室に帰ります。

 

 

   たまたま気が向けば、お客の膝に上がり、ニコニコ四方山話に付き合います。

 

   あちらはお客さん一人のテーブル と思ったら、実は相席で、

                 “ アンモニャイト ”

 

   チャオちゃんの相棒、ハナちゃんは、別室に帰るでもなく、

   リスの遊ぶベランダに面した、明るい客席の籐椅子でグッスリ。

 

   間もなく鎌倉の桜も見頃になります。

   ソメイヨシノ

 

  ヤマザクラ

 

 

        花色風初暖

        鶯声日漸遅

            花色(くわしよく) 風初めて暖かに

            鶯の声 日に漸(やうや)く遅し

 

            花の色は漸く暖かな風をうけて、

            鶯の声も日増しにのどかになってくる(春の盛りに近づいてきた)

                      嵯峨天皇 五言律詩「春日作」より冒頭二句

 

 

 

 

 

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