杯渡海鼇避

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梧竹80歳、悟るところがあった。自分の書の姿が王羲之・空海と違う。技の相違ではない、筆の相違だ。梧竹は長年親しんだ長鋒筆を捨てた。



作品.jpg骨が肉に勝つと枯木のようでうるおいに乏しい、肉が骨に勝つと綾絹のように見かけはあでやかだが力がない。骨と肉がほどよく釣り合ったとき、内にこもる精神内容と外観の形態美が兼ね具わった優れた書が生まれる。そんな王羲之・空海の書の姿は短鋒筆によるものだ。

4本最終.jpg梧竹は短鋒筆に移った。革命的スクラップ&ビルド。何がどう変わったのか、78歳と81歳の比較図版でお確かめを。老齢の加減で長鋒筆が扱えなくなったため短鋒にかえた、などと妄説を唱える人もいて世の中はさまざまだ。

梧竹は「あなた方は字を書くからいけない」といった。骨と肉が見事なバランスを確保しながら、文字は字の形から絵図の形へ、草書の線から篆書の線へ、書の線から造形の線へ等々の志向をみせている。

もう一つ、地肌の美しさ。70歳代の運動選手の張り切った筋肉から、大相撲横綱の豊かな体躯へと進展。骨格筋肉に加えて皮膚。文字と余白の境の輪郭線、その切れ味、柔らかさ、なめらかさ、文字の墨色、艶やかさ。ブログでの再現は不可能で、ぜひ真筆に直参するチャンスを求めていただきたい。

『梧竹堂書話』にいう。「書ニ皮肉骨アリ。三者具ワリテ後ニ品位生ズ」。


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