連綿草書 その1

人生.gif梧竹は数年間に及ぶ過渡期の沈潜工夫ののち、76歳のころには独創的な日本人の連綿草書を完成した。書の宗流王羲之の系譜を踏んで、わが上代様に開いた日本の美感をブレンドした独自の連綿草書は、はるかに明清を突き抜け、華麗な新世界を展開した。梧竹の偉大な業績の一つである。

 

 

海老塚的傳は「完璧な章法と打ち込む隙のない余白の美」を絶賛し、伊東卓治は「まさに懐素以上」と断言した。

梧竹は78歳のとき大壁紙50枚をみつけ借金して買い入れ、半切の100幅として1週間で書き上げた。大壁紙は竹の芽を漉いて壁に貼ってつくる貴重な紙で、墨をよく吸い筆のすべりがよいのだという。

100幅中37幅が連綿草書で、20幅は中国人の古詩を2行に、17幅は自詠詩を3行書き。

下図の中央は羲之の「思想帖」。右は本作を白黒反転したものである。両者の章法構築のセンスには、これほどに気脈の似かようものがある。文字たちは、その場に応じた自然な姿態で、立ったり坐ったり、左に右に微妙に傾斜する。両者が描く情景の匂いや味わいには、どの字の形が似ているなどという浅いレベルのものではなく、もっと高度で不思議な共感が通い合う。

李老空黄土 完成s.gif

李老空黄土 釈迦亦涅槃 人生無百歳 樽酒莫辞歓
あの老子さんも今では黄土になってしまった。お釈迦さまだって お陀仏さ。
人生 百までは難しい。樽に酒があるんだ たっぷり楽しむがいいってこと。

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