中林梧竹 なぜ80歳以降? その3

 

04 雲3sss.jpg
今回は78歳の作。前回と同じ陶弘景の詩。



 
04 山中処何有 last.jpg
梧竹は76歳のころ、独創的な連綿草書を完成した。長鋒筆のピークに到達であり、偉大な功業の一つである。王羲之の草書をベースとした、日本人の連綿草書の創造である。

文字の構築、微妙な傾斜などに 羲之の風韻をうつし、日本上代かなの流麗を添加ブレンドした極上の品質を創出した。元来かなは連綿にフィットする書体、歴史的にこれに馴染んだ日本人は、連綿に適性をもつ。文字と文字をつなげる連綿線は、文字固有の形態に逆らわず、文字の一部であるかのように、自然な流れをつくっている。

この一幅の文字たちの容姿は、高い天空から、ひらひら舞い降りる華びらのようだ。その動きを描き出したのは、長年の工夫錬磨を重ねた独自の章法。この書、詩のイメージの一段と華麗な表現に成功している。

この幅と同時に書かれた大壁紙長条幅37点が、徳島県立文学書道館に所蔵されていて、連綿草書の代表作として知られている。
「筆々脈々として躍動し、字々相通じ行間相整う。その章法のうまさ、余白の活かし方等、およそ余蘊なく、その傑作に至っては正に懐素以上」とは文化財研究所伊東卓治氏の評である。

鍛え抜いた78歳の超長鋒筆が縦横無尽、最高度の活躍飛動を現出しながら、その品格を失わず、絵画や音楽のように 詩の状景や風懐を描写して、多くの鑑賞者を魅了している。

 

04 雲3s.jpg
梧竹によるアレンジと演奏、
「陶弘景から武帝へのメッセージのテーマ」

この雲、
勢いよく空に上昇していく。
地球上の人間の営為など
気に掛けてもいない。



同じカテゴリの記事一覧

ブログ内検索