あけましておめでとうございます。
昨年中の墨縁に感謝し、本年も何卒よろしくお願いいたします。
さて、2026年の幕開けは書に欠かせない道具類、いわゆる「文房四宝」の話題が目白押しですので、何回かに分けて投稿致します。
かねてより天来書院では、奈良の小さな墨匠・錦光園(きんこうえん)の活動に注目してきました。
昭和30年代以降ほとんど採られなくなった松煙の煤。しかしこれによって作られた「松煙墨」は、現代書には欠かせない「淡墨」表現の立役者であり、無くてはならないものです。
また日本での墨作りは松煙から始まりました。よく知られた数々の古筆は松煙墨を使って書かれたはずであり、和様の臨書や写経にも好んで選ばれることがあります。
しかし材料の入手経路も限られる中、もはや松煙の自社在庫の底が見えてきてしまいました。
そこで、自分で煤を生産することにしたのです。
クラウドファンディングを成功させ、それを資金としてついに採煙所が昨年秋、始動しました。

さっそくお邪魔してきました。お忙しい中1日密着させて頂きありがとうございました。

場所は奈良市内の工房から遠く離れた、東吉野。「吉野杉」で有名な美しい森林地帯です。
ここには松煙の材料となる赤松も点在しています。林業が盛んなこの地で材料供給の協力をして頂くことができ、まさに地の利を得たといったところです。

ここで日がな一日、木材を日にくべます。川のせせらぎを聞きながらの穏やかな時間……
と思いきや、実際にはなかなか忙しい。


火加減が強すぎても弱すぎても効率が悪く、ちょうどいいトロ火を保つ必要があります。
加えて、囲いの目詰まりがしやすく、頻繁に天井部の通気口をはたきに梯子を登らなくてはなりません。
いまだ試験稼働中。こうやってデータを逐一取り、この環境下での作業を徐々に最適化させていっているところです。
日がかげる頃、炉の内壁に付着した煤を払い落として集めます。


見上げるほど大きな囲いの内壁の煤をすべて落とすのは重労働です。
かなりの時間をかけ、できるだけ払い集めます。
防塵マスクを付けながらの作業はかなり呼吸が苦しいようで、途中何度も出てきては息を整えていました。



1つの炉で1日張り付いてこのくらい。効率は現状1/150。うまく効率を上げれば、1つの炉でもこの3倍は採れるかもしれません。

さらに軌道に乗れば、炉の数をいくつも増やしてローテーションを組むことも可能です。
錦光園さんが自ら採取した松煙で製造した墨が手に入るのは、今年か来年か。続報をお待ち下さい。

※この1月に錦光園さんの墨のセールを予定しています。お楽しみに!
〒140-0001 東京都品川区北品川1-13-7 長栄ビル7F