季節に映ることば
季節に映ることば

なくよ鶯平安京

渡部 忍

うち霧らひ雪は降りつつしかすがに我家の苑に鴬鳴くも  大伴家持

すっかりご無沙汰しているうちに、新しい年が始まりました
お変わりなくお過ごしのことと存じます。
大変遅くなりましたが、2024年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

暖冬ですが、先日は関東でも本格的な雪が降りました。
このまま暖かくなってしまうのかなと思っていましたが、そんなことはなかったようです。
この寒気が過ぎるとまた暖かい気候に戻るようですが、どうなのでしょうか。

うら山すずしくよい鶯もゐてくれて 種田山頭火

しんねりと鴬団子三つぶかな 川端茅舎

一天や鴬の声透き徹り 川端茅舎

留守の庵に鶯来かとたづねけり 原石鼎

はるかにも鶯啼きぬ野に立てば 原石鼎

各地で梅まつりが始っています。
梅といえば、連想されるのはやはり鶯。
日本では、古くから鶯を「春告鳥」とも呼んでいます。
鶯の声を聞くと、春の訪れを感じますね。

鶯の「ホーホケキョ」というさえずりは、オスがメスに対するアピールするためのもの。
メスは「チャッ チャッ」という地鳴きしかしないのだそうです。
早春に、上手く鳴けない鶯が何度も鳴いているのを耳にすることがありますが、それはお嫁さんをもらうために一生懸命自主練習をしていたんですね。
なんとも健気で可愛らしく感じます。

うくひすや落花粉々たり手水鉢 正岡子規

ほがらかに鶯なきぬ風の中 日野草城

谷の雪鶯わたるあちこちと 河東碧梧桐

酒甕に鴬の藪もるゝ日ざし 尾崎放哉

鴬に凍瀧解くるけしきなし 松本たかし

万葉集でも、鶯は多く詠まれています。

ちょっと話はずれますが、虫の声を楽しめるのは日本(もしかしたら中国も?)だけなんだそうです。
海外では「雑音」として捉えられるのだとか。
鳥の声はどうなんだろう?と思います。
「ホーホケキョ」を楽しめないのはなんとも勿体ない、なんて思ってしまいますが・・・。

春の野に鳴くや鴬なつけむと我が家の園に梅が花咲く

梅の花散らまく惜しみ我が園の竹の林に鴬鳴くも

梅の花散り乱ひたる岡びには鴬鳴くも春かたまけて

鴬の音聞くなへに梅の花我家の園に咲きて散る見ゆ

我がやどの梅の下枝に遊びつつ鴬鳴くも散らまく惜しみ 

鴬の待ちかてにせし梅が花散らずありこそ思ふ子がため

「なくよ鶯平安京」
794年に桓武天皇が平安京に遷都したことの語呂合わせです。
社会の授業で覚えた記憶があります。
なくよ坊さん平安京、という語呂合わせもあるそうですね。
歴史の背景はさておき、鶯と平安京の組み合わせがなんともステキで上手い語呂合わせだなと感じたのでした。

百済野の萩の古枝に春待つと居りし鴬鳴きにけむかも

冬こもり春さり来ればあしひきの山にも野にも鴬鳴くも

朝な朝な我が見る柳鴬の来居て鳴くべく森に早なれ

鴬は今は鳴かむと片待てば霞たなびき月は経につつ

うち靡く春ともしるく鴬は植木の木間を鳴き渡らなむ

み雪降る冬は今日のみ鴬の鳴かむ春へは明日にしあるらし

環境の変化でかつてのような季節感が失われつつあるこの頃です。
が、目に写る景色を素直に楽しんでいけたらいいな、とも思います。
みなさま、どうぞお元気にお過ごしくださいね。

2024年2月12日
     
バックナンバー
季節に映ることば
天来書院ブログ一覧
天来書院
ページトップへ