季節に映ることば
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夏のお楽しみ

渡部 忍

暑中お見舞い申し上げます。

日中は30度を超える日が続いています。
皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。

7月、8月は、花火大会とともに、お祭りも各地で催される時期です。
7月29日、30日と私の住む町でもお祭りがありました。
どこのお祭りでもコロナ前と同じ規模に戻りつつあるようです。
夏祭りは、秋のお祭りとはまた違った夏のパワーのようなものを感じる気がするのですが、みなさんはいかがでしょうか?

里の子の宿宮にいさむ鼓かな 宝井其角

菅原や御興太鼓の夜の音 上島鬼貫

よし雀お祭船へ啼きかはし 臼田亜郎

八方に秋嶽そびえ神祭 飯田蛇笏

園ひろくユッカの咲きて宵祭 飯田蛇笏

地に落し葵踏み行く祭哉 正岡子規

子を抱て葵祭の道の端 正岡子規

炎天に鏡きらめく神輿哉 正岡子規

お祭の日和になりぬ花盛 正岡子規

打ち晴れし神田祭の夜空かな 高浜虚子

愁あり鬢髱つめし祭髪 竹下しづの女

添へ髪のおもたき髷や祭髪 竹下しづの女

奥四万の月にいつまで祭笛 前田普羅

祭笛四万のさぎりに人遊ぶ 前田普羅

「祭」は夏の季語になります。
平安時代に国家行事でもあった京都の葵祭、そして祇園祭。
この二つが夏の2大祭とされ、祭が夏の季語になったといわれているそうです。
祇園祭は一ヶ月に渡って多彩な祭事が行われます。
1000年以上続くこのお祭り、時代の流れとともに変化はあったと思いますが、現在まで受け継がれていることは実に素晴らしいですね。

宵祭の提灯ともしてだあれも居らぬ 尾崎放哉

帰り山車走せて徒足脛揃ひ 橋本多佳子

栗の花こぼれて居るや神輿部屋 河東碧梧桐

神輿荒れもみにもみたる柳かな 原石鼎

祭太鼓うちてやめずもやまずあれ 橋本多佳子

祭笛うしろ姿のひた吹ける 橋本多佳子

荒れ荒れし人も神輿も息みをり 松本たかし

街はお祭提灯の人のゆく方へゆく 種田山頭火

お神輿の渡るを見るや爪立ちて 芥川龍之介

げに今朝やまつりばんてん祭足袋 久保田万太郎

ものいはぬ神輿うつしや星月夜 田川鳳朗

本来、夏祭りは、「風除け」「虫除け」「疫病退散」などの祈願をするための催しでした。
「盆踊り」は亡くなったご先祖様をお迎えし、おもてなしをするという目的があるのだとか。
小さなお祭りでも、歴史あるお祭りは日本中にあるのではないかと想像できます。
さすが神の国だなと誇らしく感じますね。

この都にほへる花とさかへけん代に逢へるごとき葵祭かも 木下利玄

夏まつり神輿のあとの児の群れの小さき素足の吾児にかも似る 金子薫園

私の記憶の中に、残念ながら夏祭りの記憶はほとんどありません。
が、小さい頃、浴衣を着た記憶は残っています。
何歳の頃なのか、どこのお祭りに行ったのか、全く覚えていませんが・・・

現代はエンターテイメントが溢れかえっていて、お祭りの存在も薄れてしまって…なんてこともあるかも知れませんが、一昔前は遊びなども少なく、お祭りがとても楽しみだったという方も多いのではないでしょうか。

「祭りの頃」 金子みすゞ

山車の小屋が建ちました、
浜にも、氷屋できました。

お背戸の桃があかくなり、
蓮田の蛙もうれしそう。

試験もきのうですみました、
うすいリボンも購いました。

もうお祭りがくるばかり、
もうお祭りがくるばかり。

危険な暑さが続きますが、熱中症や事故に留意しつつ、この暑さを楽しみたいですね。
みなさま、引き続きお元気にお過ごしくださいませ。

2023年7月30日
     
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