季節に映ることば
季節に映ることば

夏のBGM

渡部 忍

気象庁から西日本の梅雨明けのニュースがありましたね。関東ももう直ぐでしょうか。
と言いましても、もう梅雨が明けたような毎日ですね。
危険な暑さなので学校の行事も変更になったり、プールの授業が中止になったり、暑さゆえの弊害もありますね。
私が子供のころは、命に危険が及ぶほどの暑さなんて想像もつかなかったですが・・・
うまく対応しながら暑さを楽しみたいですね。

そして、蝉の声も聞こえるようになりましたね。
蝉の合唱は暑さを倍増させる気もしますが、やはり夏には欠かせないBGM(?)だなと思います。

深山木に雲ゆく蝉の奏べかな 飯田蛇笏

神甕酒満てり蝉しぐれする川社 飯田蛇笏

蝉鳴くや瀬にながれ出しところてん 飯田蛇笏

初蝉や河原はあつき湯を湛ふ 石橋辰之助

蝉時雨野川のひかり木がくれに 石橋辰之助

青空や今日はじめての蝉の声 原石鼎

一点の雲無くなんと蝉に風 原石鼎

今しがた此世に出し蝉の鳴 小林一茶

薄雲の山路をすますせみの声 加藤暁台

うたたねの暮るるともなし蝉の声 炭太祇

蝉の声と一言で言いましても、種類によって鳴き方や鳴く時期、鳴く時間に違いがあるそうです。
7月後半ともなると、どの種類の蝉も鳴き出すようですので、色々な声を楽しめますね。
個人的には、ミンミンゼミの声は、夏だなーという印象を受けます。一番好きなのはひぐらしの声なのですが、どことなく寂しさも感じてしまいます。
みなさんはどの蝉の声がお好きですか?

蝉鳴いて名残雨降る木立かな 日野草城

しづけさに初蝉のまたきこえけり 日野草城

初蝉のこゑひとすぢにとほるなり 日野草城

せみのなく木かげや馬頭観世音 正岡子規

まほろしや花の夕の蝉衣 正岡子規

一山の大荒れの滝蝉鳴かず 渡邊水巴

撞鐘もひびくやうなり蝉の声 松尾芭蕉

啼き渡る蝉一声や薄月夜 芥川龍之介

松風の絶へ間を蝉のしぐれかな 夏目漱石

松風もをのがのにして蝉の声 加賀千代女

晩蜩は時にと鳴けども片恋に手弱女我は時わかず泣く  作者未詳

夕さればひぐらし来鳴く生駒山越えてぞ我が来る妹が目を欲り 秦間満

ひぐらしの鳴く山里の夕ぐれは風よりほかに訪ふ人もなし よみ人しらず

空蝉のからは木ごとにとどむれど魂のゆくへを見ぬぞかなしき よみ人しらず

吹く風の涼しくもあるかおのづから山の蝉鳴きて秋は来にけり 源実朝

鳴く蝉を手握りもちてその頭をりをり見つつ童走せ来る 窪田空穂

鳴く蝉の命の限り鳴く声は夏のみそらにひびき沁みけり 岡本かの子

橡の樹も今くれかかる曇日の七月八日ひぐらしは鳴く 斎藤茂吉

油蝉しきなく庭のあをしばに散りこぼれたる白萩の花 長塚節

山は暮れて海のおもてに暫らくのうす明りあり遠き蜩 土田耕平

彼の世より呼び立つるにやこの世にて引き留むるにや熊蝉の声 吉野秀雄

たくさんの蝉が一斉に鳴いている様子を「蝉時雨」と言いますね。季語にもなっています。
私は、蝉時雨と聞くと、山の小路や神社やお寺の境内などがイメージに浮かびます。
みなさんはどんな風景が眼に浮かぶでしょうか。

汗を吹く茶屋の松風蝉時雨 正岡子規

石に沁む石工の汗や蝉時雨 日野草城

渓流を掃けばすぐ澄む蝉時雨 川端茅舎

蝉時雨仰むく口や木の雫 正岡子規

蝉時雨野川のひかり木がくれに 石橋辰之助

桟や荒瀬をこむる蝉しぐれ 飯田蛇笏

子ども達にとっては待ちに待った夏休みも始まりました。
ご家族でお出かけする計画を立てていらっしゃる方も多いことと思います。
我が家は、次男の希望でもある水族館巡りをしたいと思っていますが、どうなりますやら。
今年はいつにない酷暑ですが、蝉の声とともに素敵な夏をお過ごしくださいませ。

2023年7月20日
     
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