季節に映ることば
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やはり端午の節句

渡部 忍

いよいよ今月から大型連休が始まりますね。
みなさんは何連休になるでしょうか?
新型コロナに対する意識も変わりつつあり、今年はどこでも多くの人出が予想されるのではないかと思います。
連休のご予定はいかがでしょうか。

そのメインとなるものは、やはり5月5日の端午の節句ですね。
現在では、男の子の誕生を祝い健やかな成長を祈願する行事ですが、元々は古代中国の陰陽五行説が由来のこの節句、日本に伝わったのは奈良・平安時代なのだそうです。

江戸時代に入ると、端午は幕府の重要な式日となり、大名や旗本は式服で江戸城に出向き、将軍にお祝いを述べました。
また、武家では跡継ぎの男子の誕生は大変喜ばしいことであり、端午の節句に兜や幟旗を飾って盛大に祝いました。
庶民もそれに倣い広まっていき、男の子の誕生を祝う日になったそうです。

そして、1948年に国民の祝日として制定されました。


厖大なる王氏の昼寝端午の日 西東三鬼

実伊勢路の端午けふの声 各務支考

深草のゆかりの宿の端午かな 飯田蛇笏

早麦の端午へかゝる乱かな 浪化

侍になつた子の来る端午哉 田川鳳朗

孫六が太刀の銘きる端午哉 田川鳳朗


武者人形兜の紐の花結び 高橋淡路女

出陣の稚き眉目武者人形 橋本多佳子

しづかにも武者人形の髪そよぐ 岸本尚毅

笈も太刀も五月に飾れ紙幟 松尾芭蕉

鯉のぼりも端午の節句を象徴するものですね。
私が子どもの頃は、庭に鯉のぼり用のポールが立っていて、大きな鯉のぼりと幟旗が飾られている家が多かったように記憶しています(田舎ですので)。
我が家は社宅住まいだったので、鯉のぼりとは無縁でしたが・・・
武者絵の幟旗はなかなか迫力があって格好良かったと記憶しています。


おもしろくふくらむ風や鯉幟 正岡子規

大阪の甍の海や鯉幟 杉田久女

彦山の天は晴れたり鯉幟 杉田久女

日が照れば登る坂道鯉幟 杉田久女

社家町や樗の花に鯉のぼり 飯田蛇笏

鯉のぼり下して居るやにはか雨 尾崎放哉

鯉幟ポプラは雲を呼びにけり 川端茅舎

鯉幟夕ベたれけり木槿垣 飯田蛇笏

鯉幟大本営発表に風澄みて 渡邊水巴

鯉幟岳麓の田植始まれり 渡邊水巴

そして、男の子の節句と言えば、柏餅も外せませんね。
柏の葉は、新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「家系が途切れない」「子孫繁栄」という縁起をかついだものとされているのだとか。
お餅の中身は、粒餡、こし餡、味噌餡がありますね。
蓬の柏餅も目にします。
個人的には蓬餅の粒餡が好きですが、皆さんはどの柏餅がお好みでしょうか。


柏餅古葉を出づる白さかな 渡邊水巴

傾城の故郷や思ふ柏餅 正岡子規

子を祝ふ俳句の会や柏餅 正岡子規

西日本では、端午の節句はちまきを食べるという地域も多いそうですね。
関東育ちの私のイメージでは、「ちまき=おこわ」で形は三角形ですが、東海〜九州では「甘いお団子」で形は細長い、なのだそうです。
砂糖醤油やきな粉などで食べるのですって。


粽結ふ片手にはさむ額髪 松尾芭蕉

粽とく二階も見ゆる角田川 小林一茶

先づ三つを神にたむけて菰ちまき 小西来山

あやめふく粽の露の竿つたひ 森川許六

またれつる五月もちかし聟粽 江左尚白

連休はどこ行っても混むから行かない、なんて声も聞かれる大型連休ですが・・・
梅雨前の一番過ごしやすい季節です。
どうぞ楽しい連休となりますよう。

2023年4月25日
     
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