季節に映ることば
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春のお彼岸

渡部 忍

3月も半ばに入りました。
それにしても、年々時の流れが早く感じられてしまいます。
まだ寒く感じる日もありますが、いよいよ春本番ですね。

3月21日は春分の日です。
暦には詳しくないので受け売りですが、今年の3月21日は「天赦日」に「一粒万倍日」が重なる最強の開運日なのだそうです。
春の陽気と重なり、ワクワクしますね。
啓蟄も過ぎ、虫も目にするようになってきました。

たにぐゝの日ねもすなきぬお中日 原石鼎

啓蟄の虫におどろく縁の上 臼田亜郎

今年の春のお彼岸は、3月18日〜3月24日となっています。
お墓参りにも行きたいですね。
私は母方も父方も、主人の方のお墓も遠方なので、なかなかお参りに行けません。
お墓参りに行くと、すっきりするといいますか、晴れやかな気持ちになるような気がします。
きっとご先祖様も喜んでくださっているのかな、と思ったり。
そんなことを考えると、今年は一度くらいはお参りしたいと思いますね。

紅梅に中日過し彼岸哉 正岡子規

草餅を売り尽したる彼岸かな 正岡子規

うき人よ彼岸参りの薄化粧 正岡子規

世の中を笑ふてくらす彼岸哉 正岡子規

人について行くや彼岸の無量寺へ 正岡子規

毎年よ彼岸の入に寒いのは 正岡子規

山門に鼠のはしる彼岸かな 正岡子規

昼中の彼岸の月や杉木立 正岡子規

道中の香煙に会ふ春彼岸 飯田蛇笏

くにはらの水縦横に彼岸鐘 飯田蛇笏

尼の数珠を犬もくはへし彼岸かな 飯田蛇笏

山寺の扉に雲あそぶ彼岸かな 飯田蛇笏

彼岸雨詣でし墓を傘の内 飯田蛇笏

雲に古る扉の花鳥彼岸寺 飯田蛇笏

手に持ちて線香賣りぬ彼岸道 高浜虚子

長谷寺に法鼓轟く彼岸かな 高浜虚子

春分を迎ふ花園の終夜燈 飯田蛇笏

彼岸より庭木動かし夏に入る 高浜虚子

山吹の帰花見る彼岸かな 高浜虚子

花ちらほら鳥も獣も彼岸かな 日野草城

春分や遠くの農夫藁梳ぐる 萩原麦草

今回は作者が偏ってしまいました。
偏りついでに・・・斎藤茂吉の短歌もご紹介します。

春彼岸の寒き一日をとほく行く者のごとくに衢を徒歩す

春彼岸に吾はもちひをあぶりけり餅は見てゐるうちにふくるる

うつつにしもののおもひを遂ぐるごと春の彼岸に降れる白雪

すこやかに家をいで来て見てゐたり春の彼岸の最上川のあめ

初夏のような陽気や、冬に逆戻りしたような寒さや、不安定な気候がしばらく続きそうです。
皆様におかれましても、体調を崩されませんようご自愛くださいませ。

2023年3月16日
     
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