季節に映ることば
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梅の花と空

渡部 忍

二月も半ばになりました。
節分、立春と季節は滞ることなく巡っていきますね。
2月頃から咲き始める花と言えば・・・梅ですね。
1月から梅のイベントが開かれているところもありますが、関東の大きな梅祭りは2月から始まるところが多いようです。

梅は、昔から句や歌の題材になっていますから、作品としても書きやすいのではないでしょうか。
今回は、梅と空、雲、月、などが歌われているものを選んでみました。

しら梅に明る夜ばかりとなりにけり 与謝蕪村

おぼろ夜に梅が香おくる風ほそし 杉山杉風

枝垂梅空へも枝の殖え伸びて ​​鈴木花蓑

白雲の竜をつつむや梅の花 服部嵐雪

白梅や日光高きところより 日野草城

月落ちて仏灯青し梅の花 夏目漱石

山風の吹きおとろふる梅月夜 飯田蛇笏

夕月やうしろに匂ふ梅の花 正岡子規

風やみぬつぼみもつ梅もたぬ梅 久保田万太郎

梅ははるか昔、一説では弥生時代に中国から渡来したと考えられているそうです。
他説では、遣唐使が持ち込んだ、奈良時代ごろに中国から薬木として渡来した、など考えられているようです。
その頃から庭木として親しまれてきました。

大空は梅のにほひに霞みつつ曇りもはてぬ春の夜の月 藤原定家

こぞもこれ春のにほひになりにけり梅さく宿のあけぐれの空 藤原定家

ひさかたの月やはにほふ梅の花そらゆくかげを色にまがへて 藤原定家

梅の花あかぬ色香もむかしにておなじかたみの春の夜の月 皇太后宮大夫俊成女

江戸時代から多くの品種の育成、改良が行われ、その種類は300以上と言われています。
花を楽しむ品種と果実を採るための品種があり、花の色や形も色々あるようですね。
みなさんはどの梅がお好きでしょうか?

いく里か月の光もにほふらん梅さく山のみねの春風 藤原家隆

梅がかにむかしを問へば春の月こたへぬかげぞ袖にうつれる 藤原家隆

梅の花さやかに白く空蒼くつちはしめりて園しづかなり  伊藤左千夫

そして、空とは少し離れますが、梅にはやはり鶯でしょうか。

鶯の声、聞いているとわかりますが、とても美しい声で鳴く子とあまり上手ではない子、はっきり言って下手な子、と個性がありますね。
人間と同じように、鶯も練習を重ねて上手に鳴けるようになるそうです。
鳴くのが不得意な子もいれば、お手本にした親鳥が下手なので自分も下手になってしまった、なんて場合もあるのだとか。
そんなことを想像しながら鶯の声を聞いてみると、とても微笑ましい気持ちになるのではないでしょうか。

梅が枝にあれ鶯が鶯が 正岡子規

梅に来て鶯の身のかるさ哉 正岡子規


わがやどの梅の下枝に遊びつつうぐひす鳴くも散らまく惜しみ 薩摩目高氏海人

鴬の音聞くなへに梅の花我家の園に咲きて散る見ゆ 対馬目高氏老

我がやどの梅の下枝に遊びつつ鴬鳴くも散らまく惜しみ 薩摩目高氏海人

鴬の待ちかてにせし梅が花散らずありこそ思ふ子がため 門氏石足

関東でも先日は雪が降りました。
確実に春の気配は感じますが、今しばらく寒さは続きそうです。
みなさま、どうぞ暖かくしてお過ごしくださいませ。

2023年2月14日
     
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