季節に映ることば
季節に映ることば

霜柱いろいろ

渡部 忍

2022年もいよいよ12月を残すのみとなりました。
「師走」と言われる通り、いつも通りの日々の流れのなかにも、なんとなく気忙しさを感じます。
12月というと寒いイメージがあるのですが、ここ何年も「12月ってこんなに暖かかったっけ?」と思う日も多かったりもしますね。
温暖化の影響でしょうか。
ひと昔前を思うと、関東では雪も降らなくなったなと感じます。

霜柱のことを少し調べていたら、驚くことに、霜柱ができない地域もあるのだそうです。
日本でもそれは当てはまり、霜柱現象がよく見られるのは、関東平野、中部・東北地方の平野地域なのだそうです。
中部と関東にしか住んだことがなく霜柱を当たり前に見ていた私にとっては、驚きの事実でした。

霜柱ができるには・・・
・最低気温が地表面温度が0 ℃ ~ ー10 ℃になる。
・火山灰を含む土壌で雪が少ない地域。
・大きい土粒と微小な土粒がある。
・土が柔らかく適度な水分(30%以上)が含まれている。
などの条件が必要なのだそうです。

つる枯るる埴崕くづれ霜柱 飯田蛇笏

ほきとをる下駄の歯形や霜柱 夏目漱石

大寺や庭一面の霜柱 高浜虚子

痩馬のあら道遅や霜柱 会津八一

枯れ尽す菊の畠の霜柱 正岡子規

霜柱そだちし石のほとりかな 川端茅舎

霜柱次第に倒れいそぐなり 松本たかし

苔青き踏むあたりにも霜柱 河東碧梧桐

たき火せる父に霜柱はかたし 尾崎放哉

たゝばたて蓬がもとの霜ばしら 加舎白雄

峠路の句碑をうづむる霜柱 飯田蛇笏

苔青き踏むあたりにも霜柱 河東碧梧桐

思えば、子どもの頃の移動手段は歩きが多かったからか、霜柱もよく見つけることができました。
学校の登校時などに、見つけると踏み見つけると踏んで、とやっていた記憶があります。
雪と同じで、足跡がないところを最初に踏むのは何となく嬉しかったり。

落残る赤き木の実や霜柱 永井荷風

霜柱ぐわらぐわらくづし獣追ふ 前田普羅

霜柱しらさぎ空に群るゝなり 久保田万太郎

霜柱倒れつつあり幽かなり 松本たかし

霜柱兄の欠けたる地に光る 西東三鬼

霜柱立つ音明日のため眠る 西東三鬼

霜柱顔ふるるまで見て佳しや 橋本多佳子

石寒し四十七士が霜ばしら 高井几董

菊も刈り薄も刈りぬ霜柱 正岡子規

蕾つく梅の苗木や霜柱 正岡子規

霜柱ひつこぬけたる長さかな 川端茅舎

そしてなんと、「シモバシラ」という名前の山野草もあるのです。
名前の由来は、白い花が並んで咲く様が霜柱のようだからではなく、枯れた茎が吸い上げた水分が外気で凍りつき、茎の周りに霜柱のような氷柱を作り出すからなのだとか。
日中気温が上がると溶けてしまうので、日々違った氷の造形を見られるようです。

霜ばしら冬は神さへのろはれぬ日ごと折らるるしろがねの櫛 与謝野晶子

男の童の杖とり犇とうつ霜柱しろし此の霜ばしら 北原白秋

こごり立ちしづけかりしかひた乾く地膚はららかし踏む霜ばしら 北原白秋

押し照る難波堀江の葦辺には雁寝たるかも霜の降らくに 万葉集

12月に入ったと同時に冬らしい寒さになりました。
もう少し寒くなれば、霜柱もお目にかかれそうですね。
車などで移動していると、道端には目が届かないので霜柱のことなど忘れてしまいますが、早朝に散歩して霜柱を探してみるのも楽しそうです。
そして、都心でも公園や植物園などに植物の「シモバシラ」が植えられているところもあるようです。
シモバシラに付く霜柱を探してみるのも面白そうですね。

「霜柱」 野口雨情

ザツク ザツク
踏んだ
踏んだ
霜柱

雀に
踏ませて
遊ばせよう

踏んだ 踏んだ
ザツク
ザツク
霜柱

雀も
踏み踏み
遊んでる

お仕事でも家事でも忙しくなる12月ですが、野口雨情の詩のようなほっこりできるひと時も意識して持てるといいですね。
気温も低い日が続く予報です。みなさま、どうぞご自愛くださいませ。

2022年12月1日
     
バックナンバー
季節に映ることば
天来書院ブログ一覧
天来書院
ページトップへ