季節に映ることば
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初冬のおやつ

渡部 忍

11月も半ばを過ぎました。
立冬を過ぎ、もうすぐ小雪ですが、予報では季節の進みはゆっくりだそうです。
それでも20度を超える日が少なくなってきましたね。
北海道では初雪が降ったそうです。
暖かいか厳しい寒さか・・・今冬はどのような気候になるのでしょうか。

以前にサツマイモの句などをご紹介した回がありましたが、今回は焼き芋の俳句を探してみました。
甘藷(さつまいも)は仲秋の季語ですが、焼薯(やきいも)は三冬のそれになります。

焼芋の固きをつつく火箸かな 室生犀星

焼芋や月の叡山如意ヶ岳 日野草城

焼藷や月の叡山如意ケ嶽 日野草城

さいかちの月夜や灯る焼藷屋 渡辺水巴

ふところの焼芋のあたたかさである 尾崎放哉

焼芋やいまはむかしのゆめばかり 久保田万太郎

焼芋やばッたり風の落ちし月 久保田万太郎

壷焼や炭火に並ぶ人の顔 篠原温亭

焼藷に今日の談笑終りけり 大谷碧雲 

ネロの業火石焼芋の竃に燃ゆ 西東三鬼

昔は落葉などで焚火をして焼き芋をすることも多かったのではないでしょうか。
今は、なかなか難しそうですね。
石油ストーブの上にアルミホイルに包んだ芋を並べて焼く、なんてこともありました。
今は、暖房器具の変化もあり、そのようなことも減ってきているのでしょうか。

おち葉焚く火もて焼きたる大き藷顔よごし食ふ我と童と 窪田空穂

そして、干し柿の季節でもありますね。
私の育った山梨では、寒くなってくると各家々の軒先に柿が吊されていました。
数年前に知ったのですが、「枯露柿」は甲州の名産なのだそうです。以前、テレビで枯露柿の生産地が紹介されているのを見たことがありましたが、巨大なオレンジのカーテンのようにずらりと柿が吊されている様子は圧巻でした。
そして、和歌山県のかつらぎ町。ここは「串柿」の特産地として長い歴史があり、この秋の風物詩を観に観光客も多く訪れるのだそうです。
串柿は、関西のお正月の鏡餅に飾られる縁起物なのだとか。鏡餅も地域によって色々な個性がありそうですね。

干柿のをかしき皺をたたみけり 三好達治

軒低し干柿したる竿斜め 松本たかし

村人に倣ひ暮しぬ吊し柿 松本たかし

柿干すや煙草納めて日影迅し 前田普羅

ころ柿も一年ぶりや淡路島 正岡子規

干柿に蜻蛉飛行く西日かな 正岡子規

父母妻子串柿のごと竝びけり 正岡子規

串柿の袖を引しか雛の中 服部嵐雪

人様の庭や畑などに柿の木が植えられているのをよく目にします。
食べられる実の生る木はいいですね。
昔は、子ども達が外で遊びながら捥いで食べたり、なんてこともありました。
今のように収穫されることなく生ったままになっているのは、寂しい気もします。

柿落ちてうたゝ短き日となりぬ 夏目漱石

山柿のひと葉もとめず雲の中 飯田蛇笏

初なりの柿を仏にそなへけり 正岡子規


柿の実のあまきもありぬ柿の実のしぶきもありぬしぶきぞうまき 正岡子規

蜂屋柿大き小さき盛りあげて心明るく眺めわが居り 島木赤彦

新型コロナもまた増えてきました。インフルエンザの季節でもありますね。
どうぞご自愛くださいませ。
我が家はリンゴ狩りにでも行ってみようかと考えています。
寒さが本番になる前の季節をお楽しみくださいね。

2022年11月17日
     
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