残暑お見舞い申し上げます。
今年もとても暑い夏でしたね。
まだ当分暑い気候が続きそうですが、お盆を過ぎると、暑さは残っていても、どことなく秋を感じられるようになります。
空の色、雲、風のそよぐ瞬間、田んぼの様子、等など。
とんぼも目にするようになりました。
日々の中で秋探しをしてみるのも楽しそうですね。
今回は、秋を代表する花の一つ、曼珠沙華(彼岸花)の句などを集めてみました。
露の香にしんじつ赤き曼珠沙華 飯田蛇笏
蒼穹を鵙ほしいまゝ曼珠沙華 川端茅舎
葉もなしに何をあわてゝ曼珠沙花 正岡子規
草むらや土手ある限り曼珠沙花 正岡子規
花さかる径のうすいろ曼珠沙華 飯田蛇笏
海鳥の影過ぎしあと曼珠沙華 西東三鬼
曼珠沙華海は怒濤となりて寄る 西東三鬼
曼珠沙華多しこの寺絵巻めく 松本たかし
彼岸花は、なんとなく妖艶といいますか、身近にあるけれど目には見えない世界に繋がっているといいますか、少し恐いような独特な雰囲気があります。
秋のお彼岸の頃に花を咲かせるからでしょうか。
墓地の周りに植えられていることが多いということも起因しているように思います。
昔の日本は、亡くなった方を土葬することが一般的でした。そのためモグラや他の動物に遺体を荒らされないように、害獣除けとして、強力な毒を持つ彼岸花をお墓の周りに植えていたのだそうです。
畦に植えられているのもよく見かけますが、動物や虫による被害防止とともに、飢饉のときに食べる蓄えでもあったとのことです。
曼珠沙華咲けば悲願の如く折る 橋本多佳子
曼珠沙華咲きそめし紅ほのかにて 飯田蛇笏
曼珠沙華ほつりと赤し道の辺に 日野草城
日輪の寂と渡りぬ曼珠沙華 川端茅舎
悔いるこころの曼珠沙華燃ゆる 種田山頭火
いつまで生きる曼珠沙華咲きだした 種田山頭火
曼珠沙華ここが私の寝るところ 種田山頭火
歩きつづける彼岸花咲きつづける 種田山頭火
曼珠沙花あつけらかんと道の端 夏目漱石
別名の「曼珠沙華」は、サンスクリット語の「manjusaka」の音写であり、「赤い花」「葉に先立って赤花を咲かせる」という意味から名付けられたと言われています。
法華経序品では、釈迦が法華経を説かれた際に、これを祝して天から降った花(四華)の1つが曼珠沙華であったことから、「天上の花」という意味もあるそうです。
妖艶なイメージは、そういうところからも来ているのかも知れません。
曼珠沙華か黒き土に頭あぐ雨やみ空のすめる夕べに 木下利玄
秋のかぜ吹きてゐたれば遠かたの薄のなかに曼珠沙華赤し 斎藤茂吉
秋の野にあまりに真赤な曼珠沙華その曼珠沙華取りて捨ちよやれ 北原白秋
大木の根こぎたふれし道のべにすがれて赤き曼珠沙華の花 古泉千樫
曼珠沙華咲く野の日暮れは何かなしに狐が出るとおもふ大人の今も 木下利玄
曼珠沙華一むら燃えて秋陽つよしそこ過ぎてゐるしづかなる径 木下利玄
風に靡く径の狭さよ曼珠沙華踏みわけ行けば海は煙れり 若山牧水
曼珠沙華ひたくれなゐに咲き騒めく野を朗らかに秋の風ふく 伊藤左千夫
学名の「リコリス」という視点から見ると、白色や黄色、ピンクなど色の種類もあり、通販などで入手できます。今や立派な園芸種なのですね。
野のわる狐わるざれに
化けて咲くよと彼岸花 三好達治 「野のわる狐」より
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「曼珠沙華(ひがんばな)」 金子みすず
村のまつりは
夏のころ、
ひるまも花火を
たきました。
秋のまつりは
となり村、
日傘のつづく
裏みちに、
地面のしたに
棲むひとが、
線香花火を
たきました。
あかい
あかい
曼珠沙華。
各地で彼岸花が群生している場所もあります。
赤い彼岸花が咲き並んでいる風景はなかなか圧巻です。
ふとした拍子に、目に見えない世界に通じる扉を感じられるかも知れませんね。
台風や雨の季節になり、災害のニュースも耳にするようになりました。
今年は少しでも被害が少ないことを願うばかりです。
その反面、秋は学校の行事が色々予定されていたり、「食欲の秋」「芸術の秋」と楽しみなこともありますね。
どうぞお元気にお過ごしくださいませ。