季節に映ることば
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紫陽花の奏でるうた

渡部 忍

6月になり、関東も梅雨入りしそうな雰囲気・・・

晴れの日は夏日になる日も多くなってきますね。

そして、今月は早くも「夏至」もやってきます(今年は21日(火)だそうです)。

 

今回は、紫陽花をメインにお届けします。

 

 


紫陽花は、誰もが知っているお花。

皆さんはどの紫陽花がお好みでしょうか?
(因みに私はガクアジサイが好きです。)

そして、紫陽花といえば梅雨。
雨に濡れながら佇む紫陽花も美しいですよね。

色々な紫陽花を題材に、是非、作品を書いてみてはいかがでしょうか。


紫陽花とひと言で言えど、種類や色も多岐に渡りますね。

・ガクアジサイ
・アジサイ(西洋アジサイ)
・ヤマアジサイ
・カシワバアジサイ
・アナベル
・ノリウツギ
・アジサイの近縁|常山アジサイ(ジョウザンアジサイ)

などなど…


色もいろいろで、お馴染みの色以外にも、

・アンティークカラー系
・マジカル系
・秋色系

という色もあるのだとか。

紫陽花の毱より蒼きうみを恋ふ  中尾白雨

あぢさゐの毱より侏儒よ駆けて出よ  篠原鳳作

紫陽花の浅黄のまゝの月夜かな  鈴木花蓑

紫陽花のはなだにかはるきのふけふ  北原白秋

紫陽花や帷子時の薄浅黄  芭蕉

紫陽花におもたき朝日夕日哉  中川乙由

紫陽花に松の雫や水打てば  尾崎放哉

紫陽花の花青がちや百日紅  尾崎放哉

藍を溶く紫陽花を描くその藍を  竹下しづの女

明けて葬り昏れて婚りや濃紫陽花  竹下しづの女

滝しぶき霧と流れて紫陽花に  新美南吉

もうこれは皆様ご存知かとは思いますが・・・

紫陽花の花の色は、土の中の「アルミニウム」が根から吸収され、「アントシアニン」と結合するかどうかで決まるのだそうです。

一般的に
酸性=青、中性=紫、アルカリ性=赤
となるそうです。
日本は酸性土壌が圧倒的に多いため、青系の紫陽花が多いんですって。
パウダー状にした卵の殻や苦土石灰で、ピンク〜赤色に変えられるのだそうです。
白いものは、もともとアントシアニンを持ち合わせていないため、土壌による色の変化はないとか。
興味深いですね。

すれすれに夕紫陽花に来て触る黒き揚羽蝶の髭大いなる  北原白秋

夏もなほ心はつきぬあぢさゐのよひらの露に月もすみけり  藤原俊成

あぢさゐの下葉にすだく蛍をばよひらの数の添ふかとぞみる  藤原定家

飛ぶほたる日かげみえ行く夕暮れになほ色まさる庭のあぢさゐ  加藤千蔭

紫陽花のその水いろのかなしみの滴るゆふべ蜩のなく  若山牧水

色も種類も数多くありますから、紫陽花から想起するイメージも人それぞれだと思います。

「紫陽花」という言葉から、どんなイメージが浮かびますか。

うすむらさきの紫陽花の
うなじふる如ほの揺る  笠美波「紫陽花」

うすむらきの花のいろ
うすむらさきの雨が降る  笠美波「紫陽花」

あじさいの花よ
ああ幼き日より
おみなごが持つ
思い出の おもいでの毱に似て  荒津寛子「紫陽花」

そっと手に触れれば
やわらかな瞳のように
わたしの心にとける
うすいろのはなびら  荒津寛子「紫陽花」

一日に七たび変化る
紫陽花の
土蔵の下を猫がゆく  山村暮鳥「猫」

こころはあじさいの花
ももいろに咲く日はあれど
うすむらきの思い出ばかりはせんなくて  萩原朔太郎「こころ」

ヤマアジサイは、別に「沢あじさい」「やぶでまり」という異称があります。

やぶでまりなどと河鹿の水あかり  木津柳芽

紫陽花は、晴れてもよし、雨もまたよし・・・

皆さま、素敵な6月となりますよう(^^)


参考書籍
「作品に書きたい花の詩」天来書院→www.shodo.co.jp/books/isbn-279/
・「四季花ごよみ」 講談社

2022年6月1日
     
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