季節に映ることば
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仏様に会いに

渡部 忍

季節の花のイベントを調べていたら、古代蓮の情報を見つけました。

埼玉では「古代蓮の里」が有名ですが、全国各地に蓮の咲く公園があり、蓮にまつわるイベントも催されるようです。

蓮は、仏教でも仏様が蓮華座に座っておられることもあり、意識することはなくとも日本人には身近な花なのではないでしょうか。

何故、仏様=蓮なのでしょう? 

当たり前に目にしていたので、今まで気にしたことはありませんでしたが…。
少しだけ調べてみました。

仏説阿弥陀経に、

「池中蓮華 大如車輪 青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光 微妙香潔」

(池の中に蓮華あり、大きさ車輪の如し。青き色には青き光あり、黄なる色には黄なる光あり、赤き色には赤き光あり、白き色には白き光ありて、微妙香潔なり。)

と説かれているからだそうです。

さはさははちすをゆする池の亀  鬼貫 *

一つづつ夕影抱く蓮かな  高浜虚子

虻蜂もそつちのけのけ蓮の花  小林一茶

白う咲きて昨日けふなき蓮かな  渡辺水巴

かたなりに花吹きこほす蓮哉  正岡子規

二度跳ねて鯉のけぞりぬ蓮浮葉  渡辺水巴

朝風や相摶ちひらく蓮の花  日野草城

水暗し葉をぬきん出て大蓮華  杉田久女

白日に蓮の香渡る広野かな  川端茅舎

緋目高のつゞいてゐるよ蓮の茎  原石鼎

    * 原文は、さはさは → さは\/(くの字点)

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我が家にも、蓮が植っている睡蓮鉢があります。

環境が過酷なのか、手入れが悪いのか、花が1〜2輪しか咲きません。

友人宅の庭にある蓮は、とても立派で驚いたことがありました。

どうすればこんなに元気に育つのか聞いてみると、「何もしてないよ」との返答でした…

立派な蓮が咲く睡蓮鉢、憧れですね。

はちす咲くあたりの風のかほりあひて心のみづを澄す池かな  藤原定家

おのづから月やどるべきひまもなく池に蓮の花咲きにけり  西行

風吹けば蓮の浮き葉に玉越えて涼しくなりぬひぐらしの声  源俊頼

すきまなくしげれる蓮の葉の池にぬきいでて立ちひらく蓮の花  岡麓

折々の風のたえ間をいのちにてはかなくとまる蓮葉の露  樋口一葉

仏様のお花の見頃はこれからですね。

蓮は、泥の中から芽を出し美しい花を咲かせる、実に高潔なイメージがあります。
仏様がお座りになるのも納得です。

是非、お近くのハスの咲く公園に、お出かけになってみませんか?
仏様に会いに。

紅蓮とみれば炎なり
炎と見れば紅蓮なり  芥川龍之介(未定詩稿)

奈落には つねに一輪の紅蓮が咲いている  生田春月(神人)

涅槃は熱帯の夜明けにひらく
巨大の美しい蓮華の花か  萩原朔太郎(涅槃)

最後におまけの話です。

この時期、友人(先に出た立派な蓮の咲くお宅です)から梅をいただきます。

友人の住む地域は梅の産地でもあり、友人宅の梅畑でも数種類の梅を栽培しています。
先日は、青梅をいただきました。

梅の花の句は数多くありますが、今回は、梅の実の句を三句。

かりそめの風に葉ごもる実梅かな  斎藤空華

青梅のおちゐて遊ぶ精舎の地  飯田蛇笏

うれしさは葉がくれ梅のひとつかな  杜国

今年は梅雨らしい気候が続きますね。

皆さま、6月後半もお元気にお過ごしくださいませ。

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参考書籍
「作品に書きたい花の詩」天来書院→www.shodo.co.jp/books/isbn-279/
・「四季花ごよみ」 講談社

2022年6月14日
     
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