季節に映ることば
季節に映ることば

五月の景色より

渡部 忍

皆様、いかがお過ごしでしょうか?

とっても久しぶりに投稿させていただきます。

 

もう梅雨入りしたかのような天候が続いていますね。

今の季節に目にする花々を思い起こし、俳句を中心に集めてみました。

 

あやめと杜若はよく似ていますが、生育地は正反対で、あやめは乾燥した土地、杜若は水辺で花を咲かせています。

● あやめ

君の姿は
初夏の
咲いたあやめの花でした   野口雨情 (菖蒲の花)

富士は雲に沈みあやめの濃紫   渡辺水巴

ひとくきの白あやめなりいさぎよし   日野草城

郭公なくや五月のあやめ草
あやめもしらぬ恋もするかな   よみ人しらず


● 杜若

杜若濡鼠の子を叱り抱き   川端茅舎

乱れたるわれの心や杜若   竹下しづの女

宵々の雨に音なし杜若   与謝蕪村

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● 夾竹桃

甘へるよりほかにすべなし夾竹桃   鈴木しづ子

夾竹桃 そのおもひでの花びら燃えて   種田山頭火

五月雨の小暗き庵に紅の
光をともす夾竹桃の花   伊藤左千夫

● 牡丹

一ところ明るいのは
ぼたんであろう
そうだ
ぼたんだ
星の月夜の
夜ふけだったな   山村暮鳥(月)

雨そゝぐ光の音の牡丹かな   渡辺水巴

ぼうたんや咲いてゐるのも散つてゐるのも   種田山頭火

虹を吐てひらかんとする牡丹かな   与謝蕪村

残月も日もいただけるぼたんかな   大江丸


● 芍薬

緑金の虫芍薬のたゞなかに   飯田蛇笏

左右より芍薬伏しぬ雨の径   松本たかし

芍薬の芯の湧き立つ日向かな   炭太祇

● 釣鐘草

かはる〴〵蜂吐出して釣鐘草   島村元

夏草のしげみがなかにうつむける
釣鐘草のよそ〳〵しさよ   木下利玄

● 鉄線

てつせんは花火の花のたぐひかな   北村李吟

山風の温微にゆるる鉄線花   飯田蛇笏

罌粟(けし)は、はかない雰囲気で可愛らしく、とても好きな花の一つです。
でも、見た目と違って、実際はかなり健強な気がします。
こういう花は、やはり広い所で群生しているのが美しいですね。

● 芥子

かげろふにゆらるゝけしのひとへかな   加藤暁台

白芥子や莟の中の花一つ   小沢碧堂

仏の花に折れば咲きつづくけしの花   尾崎放哉

罌粟ひらく ほのかにひとつ
また ひとつ   北原白秋(ほのかにひとつ) *罌粟=けし

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● 蛇苺

蛇いちご半弓提げて夫婦づれ   嵐雪

田水満ち日いづる露に蛇苺   飯田蛇笏

私の住んでいる地域では、蛇苺もよく見かけます。
蛇苺を見ると、思い出す事・・・
子どもの時、手のひらを蜂に刺された時がありました。その時に一緒に遊んでいた友達のおばあちゃんが、蛇苺の薬を手に塗ってくれたのでした。
今思えば、それは、蛇苺の焼酎漬けだったのでしょうね。
虫刺されなどに効くそうですよ。

まだしばらく寒暖の差が続きそうですね。
みなさま、体調を崩されませんよう、ご自愛くださいませ。

参考書籍
「作品に書きたい花の詩」天来書院→www.shodo.co.jp/books/isbn-279/
・「四季花ごよみ」 講談社 

2022年5月16日
     
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