『秦漢瓦當文字』 日下部鳴鶴旧蔵本

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『秦漢瓦當文字』( 日下部鳴鶴旧蔵本)を紹介する。帙の題箋は日下部鳴鶴の書である。封面に「乾隆丁未三月刊於横渠書院」とある。
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清の乾隆丁未(ひのとひつじ)は西暦1787年。今から220年前の刊行。著者は程敦。版元は臨潼県の横渠書院。臨潼県は西安の東15km程の所。
この本、上下続の三冊から成る。上巻に66種の瓦當、下巻に48種、続巻に25種が掲載されている。
制作方法がおもしろい。まず、枠と活字部分は普通の版木を彫り起こし、左版で刷り上げる。次に瓦當の部分を複製の木刻瓦當の上から、活字と枠を刷り込んだ紙を載せて拓本(普通の湿拓)を採っている。

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『秦漢瓦當文字』は鳴鶴の没後、比田井天来に渡った。大正11年のことである。
比田井天来は、昭和2年に東京渋谷代々木に、昭和10年には鎌倉に、それぞれ「書学院」を建設した。鎌倉の書学院は建長寺の塔頭・華蔵院跡地に建てられた。"母屋"と呼ばれる「書学院」、"離れ"と呼ばれる子供達の居所、書庫、そして再興された「華蔵院」のお堂である。
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建設中の華蔵院、後方が華蔵院、右が母屋。

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この華蔵院の堂内の格天井は"瓦當文"によって装飾されている。昭和7年から東京上野の美術学校の講師をしていた天来が、生徒たちに、木版刷りによって製作させたものであった。
文字と鳳凰の絵で構成されている格天井は、現在も遺っている。
次に緑青と胡粉を用いて紙に刷られた。この瓦當文のテスト刷り二種を紹介する。

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下に示す、『秦漢瓦當文字』の"長楽未央"と上の格天井の"長楽未央"は似ているような気がするのだが...。 004-copy03s.jpg

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