<校碑随筆>―西レイ印社活字本―

sugata_S.jpg 『校碑随筆』は中国・中華民国時代の方若(ほうじゃく)の著書。秦時代から五代までの碑碣の痛み具合い、欠損文字の状況を考察した論文。これにより拓本の採拓時代が判定される。
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方若は字(あざな)を葯雨(やくう)といい、浙江省定海県の人。天津国聞報主筆、天津日日新聞社兼主筆を務めた。利津公司、新津公司支配人でもあった。収集家であり、書、画をよくした人であったらしい。

桑原翠邦先生は二度目の中国巡遊の折、昭和19年4月17日(月)、北京の方若邸を訪ね面会している。案内役は総領事・太田知庸。同道したのは、中野梅山とその日の12時前に北京に到着したばかりの上田桑鳩。方若は当時、華北政務委員会委員という要職にあった。一同は邸内の"石経室"に於て、「河南洛陽所得漢石経残石」や収集品の書画古什器類を鑑賞している。

このことは、書宗院(代表・桑原呂翁)発行、『書宗院報・第42号』に翠邦先生が詳しく述べられている。

西レイ印社は、呉隠・葉為銘・丁仁・王福庵の四人の提唱によって創設された。浙江省杭州西湖の北西、孤山にある。初代社長は呉昌碩。

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呉隠(1867~1922)紹興の人。上海西レイ印社を経営し、印泥を製造販売した。印譜、金石関係書籍を数多く刊行した。

この活字本は、木刻製の木活による。一般的な活版に用いる鉛活字は、型による鋳造であるが、この木活は、一字一字手彫りである。

5年程前、西レイ印社を訪ねた時、西湖を望む社の庭での副社長の陳振濂氏との雑談の中で、この「西レイ印社木活本・校碑随筆」の話をしたら、彼は見たことがないと話された。

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この本、日下部鳴鶴旧蔵で清閑堂の印が押してある。比田井天来に渡り、南谷先生からお譲りいただいたお品である。


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