季節に映ることば
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桜 短歌と俳句

1回目:比田井和子

移りゆく季節の中から生まれた美しいことば。過ぎ去った時間に永遠の輝きを与えることば。そんなことばをご紹介するブログをスタートいたします。
気に入ったことばがあったら、ぜひ書の作品にご利用ください。すべて著作権が消滅した文学者のものです。
最初のテーマは「桜」、第一回は短歌と俳句の特集です。

 

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最初にご紹介するのは、桜をうたった短歌です。満開の桜の絢爛たる美しさ、そして散り急ぐ花びらのせつなさ。それぞれの心に呼び起こされた、忘れられない風景です。

世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし 『古今和歌集』在原業平

見渡せばやなぎさくらをこき混(ま)ぜて 都ぞ春の錦なりける 『古今和歌集』素性

桜ゆゑ風に心のさわぐかな 思ひぐまなき花と見る見る 『源氏物語』紫式部

春風の花を散らすと見る夢は さめても胸のさわぐなりけり 西行

桜木を砕きて見れば花もなし 花をば春の空ぞ持来る 「一休骸骨」一休

うらうらとのどけき春の心より にほひいでたる山ざくらの花 賀茂真淵

ひさかたののどけき空に酔い伏せば 夢も妙なり花の木の下 良寛

清水へ祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふひとみなうつくしき 「みだれ髪」与謝野晶子

しんしんと桜花ふかき奥にいつぽんの 道とおりたりわれひとり行く 岡本かの子

続いて俳句のご紹介です。17字という短いことばから、豊かなイメージが立ちのぼります。

奈良七重七堂伽藍八重桜 松尾芭蕉

人恋し灯(ひ)ともしころをさくらちる 加舎白雄

世の中は桜の花になりにけり 良寛

花びらの山を動かすさくらかな 酒井抱一

花咲くや欲のうきよの片すみに 小林一茶

山門も伽藍も花の雲の上 高浜虚子

桜ひとかたまりに咲き落ちて池水 尾崎放哉

2017年3月10日
     
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