季節に映ることば
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ここから陽(よう)の世界へ

渡部 忍

すっかり春になったと思いきや、いきなり真冬に戻り、関東でも雪が降りました。
みなさまにおかれましては、お元気にお過ごしのことと存じます。

2025年(令和7年)の春のお彼岸の期間は3月17日(月)から3月23日(日)まで。
20日は春分の日、お彼岸の中日になります。
春分の日は、20日と固定されているのではなく、毎年3月20日か21日となっていて、
国立天文台の天文学的計算によって決定されるそうです。

紅梅に中日過し彼岸哉 正岡子規

春分を迎ふ花園の終夜燈 飯田蛇笏

ほろほろと椿こぼるゝ彼岸哉 正岡子規

山寺の扉に雲あそぶ彼岸かな 飯田蛇笏

師を仰ぎ春の彼岸の入盈ちぬ 石田波郷

春分の日は、1948年(昭和23年)に国民の祝日として設定されました。
「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」とされているのだとか。
この日は昼と夜の長さがほぼ同じになるそうで、春分の日を境に生き物も植物も本格的に陽の方向に動き出すような、そんなイメージが湧いてきたりもします。

たにぐゝの日ねもすなきぬお中日 原石鼎

蝌蚪生れて未だ目覚めざる彼岸かな 松本たかし

竹の芽も茜さしたる彼岸かな 芥川龍之介

3月20日(または21日)が「春分の日」と制定される以前は、「春季皇霊祭」として皇室の祖先を祀る日とされていたそうです。
1873年(明治6年)に、「春季皇霊祭」と「秋季皇霊祭」が制定されました。
その起源は古代の祖霊信仰や儒教の影響からとされていて、江戸時代には「霊元祭」として歴代天皇を祀っていました。
現在は春分の日となっていますが、皇室では、現在も非公開で春季皇霊祭がおこなわれています。
伊勢神宮でも、3月20日に「春季皇霊祭遙拝」が執り行われるようです。

天てらすひかりを仰ぐあしたより神の御國のはるぞのどけき 霊元天皇

最近は夕方でも明るくなってきて、日が延びてきていることを実感できます。
まさに陰から陽へ移行する時期ですね。
何だか得したような、ワクワクした気持ちになるのは私だけでしょうか。
不安定な気候ではありますが、春も本番です。
お風邪など召しませんようにお過ごしくださいませ。

2025年3月6日
     
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